2010-01-01から1年間の記事一覧

根暗な報酬のこと

ある日のテストが60点で、頑張って次回80点取れた子供がいたとして、その子はたぶん、「20点増えた」という喜びと、「20点分見下せる奴が増えた」という、根暗な喜びとを、報酬として体感することになる。 努力や頑張りの報酬には、明るく表明できるものの裏…

親の目線について

謝罪というのはもちろん、本来は失敗と紐付けられないといけないのだけれど、謝罪という行為、あるいは誰かから怒られるという状況それ自体が、問題の解決と紐付けられている人というのが、たぶん社会には、一定の割合でいるんだろうと思う。 昔は怒られた …

会話タグは便利

病棟のローカルルールで、たとえば急変のコールだったら「急変です」とか、指示の確認をしたいだけなら「確認です」とか、看護師さん達に、会話を切り出す前に、これから話す内容の「タグ」を宣言してもらうようにしているんだけれど、これだけのことで、ず…

不便が強みになる

お金というものは、 「説得力のある不自由」を提案できた人に対して支払われる者なんだと思う。 消費者にとっては、便利になるほうがもっとありがたいのだけれど、便利からはお金が逃げていく。 売るものだとか、情報それ自体の価値というものは、もちろん粗…

制服が感情を作り出す

楳図かずおのSF短編で、どこだかすごい重力の惑星を探査するために、人体を改造する話があった。 探査に参加するのは男女の科学者で、主人公の青年は、先に改造された女性学者が怪物にしか見えない容貌になってるのを見て絶望していた。プロジェクトはそれで…

どこにも道端がない

いろんなものがきちんと整備されてしまった代償として、道端というものが、道路でもなければ誰かの畑や土地でもない、誰のものでもない場所というものが、ずいぶん減ってしまったtような気がする。 茹でガニを売る人 今住んでいる場所は山奥で、どの方向に車…

負担のしわ寄せと想像力

間に合っている状況に、何か新しいやりかたが導入されると、誰かが楽になる代わり、どこかにしわ寄せが行くことが多い。みんなが楽になれれば、もちろんそれが一番いいんだけれど、負担の総和を減らすのは、やっぱりなかなか難しい。 負担の総和が減らない前…

たくさんの人としゃべるための道具

ネット上で「本を買ったよ」という声をかけてもらったときには、できる範囲で、それに反応していこうなんて考えてる。 自分が今回出した本というのは読者が限定されているし、インターネット以外の告知をほとんど行っていないから、それが最大限売れたところ…

問題を先送りする医学

休日当直のアルバイトに来て下さっている、大学の救急医学教室の先生が本当に熱心で、休日でも、夜中でも、自分にできる検査はすべてやって下さって、あとから引き継ぐ側は大いに助かる。でもその一方で、地域にある基幹病院の専門家が、こうした熱意みなぎ…

書籍の訂正箇所について指摘をいただきました

販売中の「 内科診療ヒントブック 」という書籍について、今までにいただいた「ここを直したほうがいいよ」という指摘を、 まとめました。 いただいた言葉については、原則そのまま用いる形式とし、それに対して 作者側の言い訳(ずいぶん見苦しいのですが……

Android は壊れない

壊れたんだけれど。 今使っているAndroid 携帯が故障して、結局新品交換してもらったら、ほとんどのデータを、Google を通じて復活できた、そんなお話。 機械が立ち上がらなくなった 今使っている HT-03A でyoutube を見ていたら、いきなり固まって、ボタン…

読みやすさという価値のこと

ずいぶん前から作っていた原稿が、ようやく本として出版された。出来上がった本を、原稿の下読みを手伝ってくれた若い先生がたにあげたんだけれど、「ずいぶん読みやすくなったんですね」なんて驚かれた。 みて分かりにくいものの価値について。 読みやすさ…

できないことのデザイン

PCを操作するためのインターフェースは、紙テープからキーボードへ、ウィンドウとマウスへと、進歩した。PCの性能が向上して、できることが増えていく一方で、マウスやウィンドウといった、ユーザーから見たPCの顔は、「PCにできないこと」が、より分かりや…

書かれなかったことから見えてくる

情報というのは、書かれたこと以外に、書かれなかったことにも載っていて、それを読むことで、作者が何を伝えたかったのか、外から科せられた制約の中、何を重視して、何を「伝える必要がない」と判断したのかが見えてくることがある。 研修医には制限がある…

ロボットの神様

医療従事者が人であるかぎり、理不尽な思いを受け止めるのは人の役割で、現場からはトラブルがなくならない。 人しかいないその場所に、人が行っていた仕事だとか、判断を、肩代わりしてくれる機械が置かれると、理不尽な状況に居合わせた人の感覚が、怒り以…

経験の伝達には触媒が必要

ベテランの先生がたが持っている知識だとか、経験を若手に伝えるためには、伝えるベテランと、学ぶ若手と、もう1人、その場の道化役、経験伝達の触媒役としての、中間層が必要なのだと思う。 あってはならない話が聞きたい 症例検討会みたいな場所での演者は…

「しかたねぇな」が生み出すもの

半導体というものは、今ではもう、ねじや釘みたいに「あって当たり前のもの」になっていて、高品質、高性能を追求した日本の半導体は、世界レベルだと高価すぎ、高品質に過ぎて、競争力を失っているんだという。 高性能、高品質な商品を生み出す能力を持って…

本が出ることになりました

研修医時代を過ごした病院には、何年も使われ続けてボロボロで、外科の若手が練習がてら、人工血管や人工硬膜で破れた場所にパッチを当てた、 なんだか異様な見た目のソファーがあって、勤務時間を終えた上の先生がたが集まっては、毎日遅くまで、患者さんの…

配列からの自由がほしい

電子媒体でものを書くときに感じる不自由さについて。 カーソル移動が不便 それは電子カルテもそうだし、あるいはblog を書くときのインターフェースもそうなんだけれど、「機械に決められたとおりの配列に従わないと文章が書けない」というのが、電子媒体で…

ネット時代の距離感について

新しい技術として登場したインターネットが、あって当然のインフラになって、「人がそこにいること」の意味は、むしろ増したような気がする。 研修医が減った もうしばらく前からずっとそうだけれど、大学みたいな大きな場所から、研修医がいなくなった。ロ…

高すぎる目標について

こんな症例検討会をやってほしい 珍しい疾患だとか、典型的でない経過をたどった症例は、しばしば「ふとしたことから一気に展望が開けたすごい症例」として、症例検討会で発表される。演者の気づきはすごいことだし、頑張って、ああなりたいなとも思うんだけ…

責任転嫁の技術

正しい医療を現場に広めたかったのなら、正しい医療の講義をするよりも、むしろ間違ったやりかたを分かりやすく解説して、それを笑いものにしたほうが、正しいやりかたが広まりやすい。同じようにたぶん、責任ある態度を現場に広めたかったのなら、責任転嫁…

マスターアップしました

2009病棟ガイド の名前で昨年から製作を続けていたマニュアル本が一応完成し、データが印刷所に納品されることになりました。 メモ書きの束に過ぎなかった原稿をまとめるのは大変で、原稿をオーム社様に持ち込んだのが昨年12月、その頃から原稿は、Subversio…

武徳について

自分たちの業界だと「やる気」や「正義感」みたいな言葉であったり、あるいは生産の現場だと「現場力」だとか仕事の丁寧さ、といった言葉になるんだろうけれど、世の中のあちこちには、「軍人の武徳」に連なる何かというものがどこにでもあって、今はこれが…

分業する人たち

誰の胸にも自尊心があって、それを満たすには勝たないといけない。人が集まって、みんなが同じルールで勝ちを目指すと喧嘩になるから、個人が複数集まると、役割の分担が自然発生して、チームができる。 チーム内部での役割分担は、合議で決定されることもあ…

「もしも」の運用

あえて遠回りな問いを立てることで、より近い回答を得るやりかたについて。 たとえば「素人が3分間で朝青龍に勝てるやりかたを教えてください」なんて、格闘家の人にインタビューを行ったところで、たぶんたいした返事はもらえない。 それはそもそもが無理な…

理解は押しつけから始まる

理路整然と、病気のことを患者さんにしゃべり倒しても、「理解」を得るのは難しい。どれだけ詳しくしゃべっても、患者さんからは「お任せします」なんて終結宣言がでて、伝わっていると思ったことは、全然伝わっていなかったりする。 「それは要するに、こう…

「もてなし」の力

人を「もてなす」というのは、相手の動線を最小化するように、自らの振る舞いを、相手に見せることなんだと思う。 同じ仕事をこなすのに、お互いの仕事量が最小になることを目指してしまうと、それは相手から見ると「仕事の強制」であって、もてなしとは違う…

謝罪に関する覚え書き

そのうちまとめたいと思っているもの。ゴールでなく、手段としての謝罪について。 謝罪というものを、事実と感情とを切り分けるための手段である、道具であると考えることで、謝罪の使いかたが上手になるんだと思う 苦情の原因は、「相手の勘違い」などでは…

交渉における補給の問題

恐らくは自尊心というものが、交渉における通貨になる。 「あの人はプライドが高い」という表現に出てくる「高さ」という考えかたは、お金で言うと「気前の良さ」や「お金の使いかた」みたいなものであって、高い低いだけでない、本当はもっと複雑なものなん…