2010-01-01から1年間の記事一覧

通過儀礼が事後的に合理化する

機能の豊富さだとか、造形の緻密さだとか、何かを「好みだ」と判断するときの、 合理的な理由というものは、けっこうな割合で、後付けされるものなんだと思う。 判断というのは、やっぱり不合理に行われることが多くて、人間は結局「好み」で いろんなものを…

日用品がプラットフォームになる

古くから身の回りにあったり、日用品として親しまれている何かに、別のコンテンツを重積する仕組みを乗せて、 課金システムを整備すると、恐らくはそこに、なにがしかの人が仕事をしていけるだけのプラットフォームが生まれるのだと思う。 運動靴をメディア…

柔軟さのコスト

診療というものも交渉の一形態であって、交渉ごとに、自分が「縦深」というものを利用できるようになったのは、 まだまだ最近のことのような気がする。 縦深を利用した、柔軟な対応を行えるようになると、外来でのトラブルが減る。幸いに、まだそうなったこ…

謝罪というもののありかた

Sorry Works という、米国医療の「謝罪」の教科書からの抜き書き。 日本だとこう、謝罪というものが誠意の文脈で記述されることが多くて、個人的にはそういう立ち位置には違和感があったのだけれど、この本が取りあげている謝罪というものは、けっこう実際的…

約束志向について

恐らくは「最新の約束が最重要」というルールで、お客さんの問題を解決していくやりかたが、サービスとして、 顧客を最も快適にするのではないかと思う。 病棟移動のこと ずいぶん元気になった患者さんがいて、過去に何回か入院した経験を持つ方で、この人か…

次につながる制約のこと

それが資金であってもマンパワーであっても、何かが「足りない」状況に対峙したときには、足りない何かを工夫で補わないといけない。 そういう工夫はたぶん、 資金が潤沢にあったらできたこと、「リッチ」とか、「効く」みたいな、肯定的なパラメーターを、 …

「何もしないこと」を決断するとき

「やれるだけのことはやった」状態とは、あらゆる可能性を探索し、試み たという意味であって、一つの方法を機械的に繰り返し、拡大し、結果とし て全ての資源を損耗しつくした、という状態とはちがう[18]。 これは明らか に判断の誤りなのに、しばしば満足…

刑事尋問の今が知りたい

最近ずっと、コミュニケーションに関する昔の文章をまとめて「blog 本」みたいなのを作っているんだけれど、 その流れで、米国の、医療過誤訴訟の対策本をずいぶん読んだ。 どの本にもたいてい、「弁護士はこんな罠を仕掛けてくる気をつけろ」という対策を指…

名前が実体を作り出す

「マナーを守りましょう」だとか、「患者さんに敬意を持って接しましょ う」だとか、理念を毎日唱えても、人の行動は変わらない。 何かを変えるときには、考えかたを改めて、結果として振るまいが変わっ ていくのが正いけれど、たいていそれは上手くいかない…

流れに対する想像力

待ち時間を短くする、あるいは「待った」感覚を減らすための方法について。 米国の、医療過誤訴訟を回避するためのマニュアル本では、とにかく患者さんを待たせてはいけないこと、 待たせたときには、すぐに謝ることが大切なのだと、訴訟回避の方法を紹介し…

医療過誤裁判というもの

手元に集めたいくつかの本を読んで考えたこと。自分はもちろん、法律畑は全くの素人で、 幸いなことに、今までのところ、患者さんとの大きなトラブルに巻き込まれた経験はないものだから、 以下に書いたことは全て推測。 訴訟というもの 民事訴訟は、平成9年…

医療過誤訴訟を生き残る

「How to Survive a Medical Malpractice Lawsuit: The Physician's Roadmap for Success 」という本の抜き書き。 米国の本だから、日本の裁判で、こうした考えかたがどこまで役に立つのかは分からない。 訴訟されるとこうなる ある日いきなり訴状が来る。頭…

交渉における先手というもの

外来という場所は、患者さんや、そのご家族と、主治医である自分たちとが初めて遭遇する場所であって、遭遇という状況においては、「先」を取ることを、常に考えておかないといけない。 患者さんの側、特にご家族に「先」を取られてしまうと、治療の主導権が…

グレーな需要を掘り起こす

「欲しいもの」と「欲しくないもの」との間には、たぶん「お金を払うほどではないけれど、あるならほしい」という、グレーな需要というものがあって、値下げをいくら行ったところで、お金を支払うという動作がそこにあるかぎり、こうした受容は掘り起こせな…

感情労働とコントロール

交渉の目標は「状況のコントロール」であって、いろんな人との応対が必要な感情労働において、コントロールされた状況というのは、「いつでも勝てるけれどあえて勝たない」状態の維持なんだと思う。 誠意では足りない 感情労働分野において必要なのは、そこ…

接遇の交戦規定

対価をもらってあるサービスを提供する仕事において、危機管理のありかたとして、「平等である」というのは外せないし、平等を実現するためには、そもそも自分たちが提供しているサービスとは何なのか、それを文章化して、全ての職員で共有しておかないとい…

「暗い部屋」感想

「暗い部屋」というビジュアルノベルを読んだ感想文。同人ゲームだけれど、Amazon から購入することが出来る。公式サイトはこちら。感想だけ。伏線の検証とか、たとえ話の対比を調べたりだとかはこれから。 暗い部屋posted with amazlet at 10.07.01暗い部屋…

そのインターフェースから出来ること

自分が妄想する人型ロボット話の続き。 フィードバックの同軸性 機械に対して,人間側が働きかけて、機械は動いて、結果を操縦者にフィードバックする、このときのフィードバックには、恐らくは「同軸性」みたいな要素があって、同軸でないフィードバックは、…

いい人の脆弱性

今は誰もがネットワークでつながっていて、自分がどれだけ気をつけたところで、つながりを持った誰かから、漏れてはいけない情報は、簡単に漏れてしまう。 情報が漏れたところで、そもそもそれが問題にならないような振る舞いをしていれば大丈夫なはずなんだ…

おしまいの型というものがある

型というと、構えだとか、刀の振りかた、あるいは駒の並べかたや進めかたみたいな、むしろ序盤の技術を形容するための言葉に聞こえるのだけれど、達人と呼ばれる人たちというのはたぶん、「おしまいの型」というものを体得していて、ここに向かって、状況を…

動作が意識に先行する

「動作には文脈があって、身体というものは、頭から、あるいは環境から入力された動作文脈に対して予測された次の動作を返す、 一種の推測変換エンジンである」と仮定する。 生まれたばかりの生き物は、恐らくは空っぽのデータベースしか持っていない。人間…

不自由な言葉は話が通る

楽天の社内公用語が英語になった という記事を読んで考えたこと。 あえて「みんなが不自由な言葉を使う」ことで、得られるものというものが、案外たくさんあるんじゃないかと思った。 日本語は誰もが得意 楽天は日本の会社で、勤めている人のほとんどは日本…

謝罪は切り返しの出発点

謝罪というものが、事実と感情とを切り離す道具なのだとしたら、説得という行為は、事実に対してその人が抱いた感情を表明して、生み出された感情と、相手の行動とを接着しようとする試みなんだと思う。 無理矢理の「説得」に対して、素早く「謝罪」を行うこ…

ドクトリンを学びたい

ワシントンマニュアルという、ずいぶん昔から改訂が重ねられている教科書の33版を読んで考えたこと。 差分を知るのは大変 ワシントンマニュアルの33版はずいぶん厚くなっていて、今回のは1000ページを超えていたけれど、内容の骨組みみたいなものは、それほ…

理解は大切

交渉ごとというのは今のところ、「理解」「説得」「納得」というのが基本的な流れであって、納得が達成できなかったときに、話を切り返す起点としての「謝罪」というものがあって、交渉は、このサイクルを回しながら、最終的な「納得」へと導く技術なんだろ…

できないことの使い分け

選択枝だとか、できることの幅広さと、意志決定の速度とはトレードオフの関係にある。「それにできないこと」に注目することで、そのメディアの使いどころみたいなものが見えてくるんだと思う。 電話は便利 たとえば病棟で何か看護師さんに確認したいことが…

むかつく人のこと

自分の人間性に問題があると言われれば、これはもうそのとおりとしか言いようがないんだけれど、 いろんな人と喋ったり、何かをお願いする機会があって、「この人は使える」なんて感じる人と、 話していてもなんだか暑苦しいというか、「この人は使えないな…

「つまらない」は正義

口蹄疫の事例 についての、「私自身はやってきたことに全く反省、おわびすることはないと思っている」というコメントを見て思ったこと。 誤解を設定して、それに謝罪する 口蹄疫の対応にはマニュアルがあって、実際のところ、政治家の人に判断できることはそ…

未来から道筋を探す

チームで何かを生み出すときには、「こんなものを作りたい」という目的と、もう一つ、「それが達成された未来」のビジョンを、なるべく具体的に語れるように思い描いておくと、意思統一がしやすい。 方向要素と距離要素 「こうしたい」と、「それでさらにど…

はじまりの物語

魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」 というWeb 小説を読んだ感想文。以下、「まおゆう」と略す。 学ばなくても社会は回る 自分は今でこそ、経済の視点を絡めた文章を時々書いているけれど、2005年頃までは、経済学に興味がなかった。 経済学…