嫌話

Amazonのレビューについて

「韓国に関するフジテレビの報道姿勢はやりすぎだ」という話題があって、フジにスポンサーとして参加している「花王」が叩かれて、Amazon のカスタマーレビューがものすごいことになっている。 「この製品を買ってはいけない」だとか、「花王は韓国の手先だ…

無能から見える風景

組織のリーダーが「情報を隠蔽」したり、あるいは「まわりをイエスマンで固めた」り、なにやら陰謀めいた振る舞いをしているときには、隠された意図があるのではなく、リーダーの能力が足りていないことのほうが多いのだと思う。 扱える事実には限りがある …

悪い奴らは来なかった

病棟で3年過ごした昔、上司の書いた処方箋を見て、「こうすればもっといいのに」なんて批評家気取りができるようになった頃、島に飛ばされた。邪魔な上司の指示が入らない、「こうすれば」を自分の責任で行える機会がいよいよ巡ってきて、それをやろうとして…

責任者はいなかった

東京電力の記者会見が、ニコニコ動画で公開されていた。 見どころというか、不気味な光景は30分を過ぎて以降の後半部分で、「放水の決定を下したのは、結局誰なのですか?」という記者の質問に対して、東京電力の人たちは「申し訳ありませんが、調査をしてか…

喧嘩する上司の見守りかた

どんな組織でもたぶん、問題に対してチームが一丸となって当たる時期と、お互いが功を取り、過失を押しつけあう分裂の時期とがある。 問題が大きな状況においては、どれだけ仲の悪い人たちも団結する。そうでないと、自分たちが問題に食われてしまうから。成…

努力には正しい方向がある

どこかに就職したり、何か会社を興してみたりといった体験を持たない、生まれついての「プロの政治家」という人たち、 学校を出て、最初から政治家として活動して、努力した人たちが、そのまま最上階まで行ってしまうのは、恐ろしいことだと思う。 努力した…

刑事尋問の今が知りたい

最近ずっと、コミュニケーションに関する昔の文章をまとめて「blog 本」みたいなのを作っているんだけれど、 その流れで、米国の、医療過誤訴訟の対策本をずいぶん読んだ。 どの本にもたいてい、「弁護士はこんな罠を仕掛けてくる気をつけろ」という対策を指…

いい人の脆弱性

今は誰もがネットワークでつながっていて、自分がどれだけ気をつけたところで、つながりを持った誰かから、漏れてはいけない情報は、簡単に漏れてしまう。 情報が漏れたところで、そもそもそれが問題にならないような振る舞いをしていれば大丈夫なはずなんだ…

根暗な報酬のこと

ある日のテストが60点で、頑張って次回80点取れた子供がいたとして、その子はたぶん、「20点増えた」という喜びと、「20点分見下せる奴が増えた」という、根暗な喜びとを、報酬として体感することになる。 努力や頑張りの報酬には、明るく表明できるものの裏…

武徳について

自分たちの業界だと「やる気」や「正義感」みたいな言葉であったり、あるいは生産の現場だと「現場力」だとか仕事の丁寧さ、といった言葉になるんだろうけれど、世の中のあちこちには、「軍人の武徳」に連なる何かというものがどこにでもあって、今はこれが…

責任の所在について

たとえば「気迫さえあれば、竹槍でB29ぐらい余裕で撃墜できる」なんて怒鳴る軍人がいたとして、その人に「具体的に気迫を見せて下さい」と言ったら、たぶん殴られる。実際にB29が来たとして、竹槍構えて、撃墜できなかったら、やっぱり「気迫が足りない」と…

病棟の摩擦

「戦場の摩擦」、「戦場の霧」という考えかたがあって、このへんはもしかしたら、ほかの学問とか、業界なんかでは過小評価されていたり、場合によっては「ないこと」にされているような気がする。 摩擦 これは要するに「通信の遅延」みたいな意味だと理解し…

働きかたが多様化している

今うちの施設に来てくれている内視鏡の先生は、普段は別の県で仕事をしていて、 週に1回、200km近く離れたその場所から、内視鏡検査のためだけに、車を飛ばして 病院に来る。もっと近くにだって、たぶん内視鏡医を必要としている場所は あるんだろうけれど、…

時が止まっていた

NHKクローズアップ現代で、小学校教育が特集されていた。「最新」の教育手法が、 見ていてなんだか懐かしくて、その懐かしさに、ぞっとした。 紹介された「最新」技術は、自分が昔習ったやりかたに、あまりにもそっくりだったから。 昔からある最新のやりか…

203高地症候群のこと

「譲れない何かを守るために、あらゆる犠牲を惜しまず戦力を投入しようとして、目標を見失う状態」のことを、 個人的に「203高地症候群」と読んでいる。 こういうたとえ話として、203高地はそもそも正しくないみたいだし、そんなに珍しい状況だとは 思えない…

「グダグダ」駆動型の問題解決手法

政府が「まだ感染の拡大を阻止する時期だ」なんていう立場を崩していない中、大阪と神戸の人たちは、「もう感染は蔓延しているから、発熱外来に患者さんを集中させても意味がない」、という認識を表明して、「蔓延期」のやりかたに舵を切った。 恐らくこれか…

イベントドリブンは勘弁してほしい

連休中日。外来は毎日大賑わいだけれど、検疫官の人たちが過労で倒れそうな 勢いで頑張っているからなのか、今のところはまだ、新フルエンザ発生、という話は伝わってこない。 人も増やすみたいだけれど、空港は、今の時点ですでに限界超えているのに、 この…

「悪い人」とはつきあいやすい

ソセゴン中毒のこと 麻薬系鎮痛薬の依存になってしまって、いろんな病院を転々とする人がときどきいて、外来でトラブルの種になる。 パターンはだいたい決まっている。外来では診断不可能で、実際痛くて、 入院中は、たしかに痛み止めとして、麻薬系の鎮痛薬…

自由診療のこと

極めてまれなできごと 相手の気が動転している こんな条件がそろっている場所には、ビジネスチャンスが転がっている。 葬儀の記憶 父親が亡くなった夜、大学出入りの葬儀社の人たちが駆けつけてくれた。 いい人たちだった。父親のことを悼んでくれて、「全部…

「物言わぬ上司」の力

初めて離島に飛ばされた昔。何でもできる気分でいたのに、「普通の肺炎」で 外来に来た患者さんと対峙して、薬を処方できなくなった。 「それができる」ことと、「それを決められる」こととの断絶について。 いつも上司がいた 当時たしか3年目ぐらいだったか…

もうすぐ家が建たなくなる

何となくだけれど、自分たちの業界では、もうすぐ「家が建たなくなる」予感がする。 業界からは、「いわゆる大工さん」がいなくなる。 煉瓦を積む専門家だとか、かんなをかける専門家はたくさん生まれるだろうし、 そうした「部分の専門家」の腕前は、おそら…

メイドロボットを開発するセンス

「夢の扉」というテレビ番組に、東大でロボットを作っている研究室が取り上げられていた。 手足と頭のついた、本物の「メイドロボット」作っていた。東大なのに。 シンプルな問題を複雑に解く メイドロボットは、人よりも一回り大きなサイズで、二本の腕と、…

老人を食べるしかない

年配のドクターが多い病院だから、「友達の友達」ぐらいのところに政治家がいて、 医局ではときどき、政治の床屋談議がはじまる。 大局無視の、田舎の財源について。 地方都市の現況 うちの県は、街作りが完全に破綻していて、県庁所在地の駅前でさえ、夜の8…

頻度の非対称性について

「どうしようもない人にぶつかる頻度」というのは、サービスを提供する側と、 サービスを受け取る側とではどうしても異なるけれど、救急車というサービスは、それが極端すぎる気がする。 救急車を邪魔する人は多い 患者さんを他の病院にお願いするときとか、…

専門家は結論を出せない

病院は「(開業医は)患者を救急搬送したら、墨東に入って手伝ってほしい」と提案した。 開業医たちは「なぜ医師を補充しないのか」「公立病院の責務はどうなったのか」と反発し、 議論は2時間半に及んだが、具体策は決まらなかった。 毎日新聞ニュースより…

業界の嫌話

同業者どうしの年末飲み会のメモ。内科と外科と、整形外科と、あと開業した人達。 内科は減っている。外科も減っている。産科小児科は言及以前で、整形外科も、いろんなところで「減った」という話ばかり聞く。医師自体は増えているはずなのに、「どこに行っ…

墨東病院のこと

墨東病院の産科が、11月から2人当直体制を復活させるらしい。 問題が発生した都立墨東病院(墨田区)は、11月の土日祝日の当直体制を、 これまでの1人体制から可能な限り、>2人体制へと強化するとした。(中略) 当直が1人体制の日は、常勤医師による当直…

神様のまずい設計

人間の体はよくできているけれど、ライフスタイルが変化すれば、やっぱり「設計」は古くなる。 胃を切った人は元気 「メタボ検診」の悪影響で、病院に健康診断の患者さんが大挙して、一時大変だった。 普段病院に来ないような人達をたくさん診察して、「胃を…

見たいものしか見えなくなる

寝たきりの、普段から喀痰でうがいしているような患者さんを、老健施設から受ける。 そういう人は、どこから先が「病気」の範疇で、どこから先がそうでないのかはっきりしない。 熱が出て、呼吸が悪くなったら病院で受けて、なんとか立ち直って、熱が下がっ…

自動体外式除細動器のこと

「うちの人が倒れました」なんて救急要請があって、救急隊が現着してみたら心臓停まってて、 救急車に積んである自動式の除細動器をつけてみたら「心室細動」の表示が出て、 すかさず直流除細動のボタンを押したら、患者さんが復活した、なんて事例が、 今年…