2009病棟ガイド

誤植のお詫びと訂正

販売中の「 内科診療ヒントブック 」という書籍について、以下の誤植がありました。 深くお詫びさせていただくとともに、訂正させていただきます。 誤植箇所は、p.280 の1行目です。 誤) 「喘息の薬」β遮断薬 正) 「喘息の薬」β刺激薬 皆様にご迷惑をお掛…

たくさんの人としゃべるための道具

ネット上で「本を買ったよ」という声をかけてもらったときには、できる範囲で、それに反応していこうなんて考えてる。 自分が今回出した本というのは読者が限定されているし、インターネット以外の告知をほとんど行っていないから、それが最大限売れたところ…

問題を先送りする医学

休日当直のアルバイトに来て下さっている、大学の救急医学教室の先生が本当に熱心で、休日でも、夜中でも、自分にできる検査はすべてやって下さって、あとから引き継ぐ側は大いに助かる。でもその一方で、地域にある基幹病院の専門家が、こうした熱意みなぎ…

書籍の訂正箇所について指摘をいただきました

販売中の「 内科診療ヒントブック 」という書籍について、今までにいただいた「ここを直したほうがいいよ」という指摘を、 まとめました。 いただいた言葉については、原則そのまま用いる形式とし、それに対して 作者側の言い訳(ずいぶん見苦しいのですが……

読みやすさという価値のこと

ずいぶん前から作っていた原稿が、ようやく本として出版された。出来上がった本を、原稿の下読みを手伝ってくれた若い先生がたにあげたんだけれど、「ずいぶん読みやすくなったんですね」なんて驚かれた。 みて分かりにくいものの価値について。 読みやすさ…

書かれなかったことから見えてくる

情報というのは、書かれたこと以外に、書かれなかったことにも載っていて、それを読むことで、作者が何を伝えたかったのか、外から科せられた制約の中、何を重視して、何を「伝える必要がない」と判断したのかが見えてくることがある。 研修医には制限がある…

「しかたねぇな」が生み出すもの

半導体というものは、今ではもう、ねじや釘みたいに「あって当たり前のもの」になっていて、高品質、高性能を追求した日本の半導体は、世界レベルだと高価すぎ、高品質に過ぎて、競争力を失っているんだという。 高性能、高品質な商品を生み出す能力を持って…

本が出ることになりました

研修医時代を過ごした病院には、何年も使われ続けてボロボロで、外科の若手が練習がてら、人工血管や人工硬膜で破れた場所にパッチを当てた、 なんだか異様な見た目のソファーがあって、勤務時間を終えた上の先生がたが集まっては、毎日遅くまで、患者さんの…

高すぎる目標について

こんな症例検討会をやってほしい 珍しい疾患だとか、典型的でない経過をたどった症例は、しばしば「ふとしたことから一気に展望が開けたすごい症例」として、症例検討会で発表される。演者の気づきはすごいことだし、頑張って、ああなりたいなとも思うんだけ…

マスターアップしました

2009病棟ガイド の名前で昨年から製作を続けていたマニュアル本が一応完成し、データが印刷所に納品されることになりました。 メモ書きの束に過ぎなかった原稿をまとめるのは大変で、原稿をオーム社様に持ち込んだのが昨年12月、その頃から原稿は、Subversio…

面白い物を生み出す仕組み

出版社ごとの、文化というか、時間の流れかたについて。 原稿は忘れた頃にやってくる ずいぶん昔、所属医局で教科書を書くなんて話が持ち上がったときには、ずいぶんゆっくりとした流れだった。 企画書が回ってきて、分野ごとに担当執筆者が決められて、締め…

生産的な言葉の値段

要するに声がほしい。自分が抱えている問題に対して、その「声」をもらうことで、問題が解決したり、少なくとも問題を抱えて声を聞く、そんな体験を通じて、少しでも前に進みたい。 こういう欲求は、裏を返せば「俺様に耳あたりのいい、役に立つ言葉だけをた…

大きなものの作りかた

この1年ぐらい、自分なりに大きなものを作ってきて思ったこと。 何かやりたいこととか、明確な目的があって、そんな骨格に肉をつけていくように、一つのプロダクトが仕上がっていくことは、むしろ少ないんじゃないかと思う。プロダクトというものは、たぶん…

この本は何でないのか

何人かで共同作業を行うときには、「ない」で目標を定義しておくと、喧嘩を回避しつつ、生産的な意見を出しやすかったんだと思った。 自分が今作っている原稿について。 「眼」を調達するのは難しい 今自分が作っているのは、症状を見たらいきなり検査を組ん…

記録が前進の原動力になる

今は電子化された原稿を、出版社の方に、暫定的に Subversion で管理していただいて、 原稿に加わった変更の履歴だとか、あるいは出版社側で行われた処理については、 逐一Trac というアプリケーションで閲覧できるようになっている。 そもそもまだ、企画が…

「その場の普通」を販売すること

今また別の出版社お話をさせていただいて、「以降は Subversion が使える、という前提でお話をさせていただいてよろしいですね」なんて メールをいただいた。 もちろんそんなソフトは使ったことないんだけれど、「もちろんです」なんて返信して、入門書を探…

「ない」を重ねて未知を知る

「うちの患者さんじゃありません」なんてコメントが、いろんな科から戻ってくる。 原因疾患が特定できない患者さんを抱えて、自分じゃ分からないから、いろんな専門科に患者さんを紹介するんだけれど、「少なくとも循環器じゃない」だとか、下手すると「少な…

研修医向けのマニュアルを改訂しました

話自体はまた流れてしまったのですが、出版社の方から指摘をいただいた事項について、できる範囲で訂正を行いました。 本書の意図するところについて、「前書き」に相当するものを記載しました 各章ごとに記載されている「鑑別診断チャート」の使いかたを解…

「雑な物づくり」に未来がある

今作っている研修医向けのマニュアル本について、少しだけ話が前に進んで、昨日は出版社の方と、いろいろお話をさせていただいた。まだまだ先は長そう。 いろいろ思ったこと。 出版は大変 「自分の電子原稿が、出版にはあんまり貢献できない」ということが、…

伽藍の誤謬と戦局眼

2002年、ペンタゴンは、冷戦終結以降、最大規模の軍事作戦演習を行った。イランへの攻撃を想定した、「ミレニアムチャレンジ」と名付けられたこの演習は、情報化、ネットワーク化の行き届いた、最新装備の米軍が無敵であることを証明するための演習だったは…

CMDT 2010年版に対応しました

参照していたCurrent Medical Diagnosis and Treatment の改訂に伴い、各章の参照ページを2010年版に準じたものに訂正し、主だった改訂箇所について、内容に反映させました CMDT2010年版に記載が加わったことに伴い、新たに「インフルエンザ」と「ワーファリ…

Web 版病棟マニュアル

休みを利用して、内容を一部改めました。 神経内科領域の記述を増やしました 索引を強化しました 削った記載も多いのですが、いろいろあって、結局10ページぐらい増えました スマートホンが使える人は、あるいはWeb 版を使ってもらうと便利かもです。 文中に…

WEB 版マニュアル

何とかLaTeX2HTML が通るようになったので、WEB 版を上げておきます。 まだまだ挙動の検証が不十分なので、URL を含めていろいろ変更される可能性があります。 ソースファイルの共用ができていないため、しばらくの間は PDF 版 の改訂が先行すると思います。…

分からないときの振る舞いかた

間違える、あるいは「放り出す」といったほうが正しいのかもしれないけれど、患者さんを診察して、 その人の抱える問題に対して、主治医としてなんのアイデアも浮かばないときに、 患者さんに対して、どう「ごめんなさい」をすれば、その人の問題が解決する…

「書かれたルール」と「本当のルール」

ルールブックに書かれたやりかたと、そのゲームに勝つためのやりかたとはしばしば異なって、 ゲームはだから、「ルールを守る」のが好きな人と、「ゲームに勝つ」のが好きな人と、 たいていは2つの文化が衝突する。 「イヤーノート」という教科書 「本がルー…

17時になったら上司と挿管

ずっと作っている研修医向けの本に、「喘息の患者さんを受け持ったら、 その日の17時に挿管の適応を決定する」という項目を入れることにした。 気管内挿管みたいな、生き死にに直結するような手技の適応は、医学的にでなく、むしろ社会的に 決定されるべきだ…

マニュアルの一部改訂を行いました

上の先生がたに内容の検証をお願いし、結果の一部を反映させました。 循環器領域の話題で、ガイドラインに沿っていなかった場所の記載を一部改めました 「妊婦さんに投与してもいい薬」の種類を増やしました。一応教科書の記載からの転載ですが、自分自身で…

プロカルシトニンの社会的有用性について

今作っているのは「症状」で分類した教科書で、患者さんはたいていの場合、何らかの「症状」を抱えて病院にやってくる。 西洋医学は「臓器」で分類されていて、医師国家試験は全ての臓器を網羅しているから、 医師はあらゆる臓器を診察できることになってい…

被弾したあとのことを考える

1970年代前半、アメリカで新しい考えかたに基づいた攻撃機が設計されることになって、 アドバイザーとして、当時現役を引退していた、ベテランパイロットが招かれた。 実戦というものをよく知っていたその人は、これから作られる航空機に対して、 「被弾しな…

西洋医学のアンチョコ本について

調べて考える余裕のない状況で、とりあえずとっさの対処を行いたいとき、 知らない疾患であっても、とりあえず知っているふりをしたいとき、 夜間に患者さんが急変して、まわりには他に、聞ける人なんて誰もいない状況に置かれたときに、 アンチョコというも…