2005-03-01から1ヶ月間の記事一覧

大学病院を出る人たちへ

最後はやはりこれで。 おはよう、諸君。 ……あと一時間たらずで、君たち研修医諸君は市中病院へ向かって飛びたち、 史上空前の強敵と交戦する。時を同じくして、各地の大学病院も、日本中の 市中病院に対し同様の攻撃を行う手はずだ。 諸君がまもなく赴く戦い…

ローテーション終了

最初の病院に就職したとき、全てのレジデントは1本のハサミをもらった。 これはCPR用の、患者さんの服を切り裂くためのもの。非常にごっついデザインで、実際のところ何でも切れる。見た目とは逆に値段は安価で、1本500円もしない。 レジデントというものは…

google八分

3月半ばになってアクセス数が激減、googleの検索ワードが全く引っかからなくなった。表ページ以下、サイト内においてあるもの全てだめ。 ついに見捨てられたかな、と思っていたら、圏外からのひとこと(分野は全く違うがものすごく勉強になる)のような大手で…

電撃戦的治療

疾患の急性期は、対処をしないと患者はどんどん悪くなる。 医師と病気との戦いは、患者さんの体が戦場だ。力強い治療を行えば、より確実に敵を追い出すことが出来るかもしれない。しかし、片端から核爆弾を投下しようものなら、その土地は二度と使い物になら…

「流し買い」的な診断手法

救急外来などで患者さんを診察するとき、病歴から想像できる全ての鑑別診断を検討していたら、時間がいくらあっても足りなくなる。 患者さんの症状に対応する「全ての」疾患など想像しようものならその数に圧倒され、思考が停止してしまう。鑑別疾患の数は膨…

世代間の抗争

刀鍛冶は一生かけて日本刀を作りつづける。目標にするのは鎌倉時代の名匠「正宗」、新撰組が愛用したことで有名な「虎徹」。伝説の域に達した達人の業物だ。 どんなに努力しても、達人の日本刀にはなかなか及ばない。 刀鍛冶は毎日炎と向かい合いながら鎚を…

ウィルスのぬいぐるみ

アンゴラと国連当局者は22日、アンゴラ北部でマールブルグ・ウイルスに感染したことが原因で96人が死亡したと明らかにした。 マールブルグ・ウイルスは、出血性の熱を呈する「高病原性」かつ「高伝染性」のウイルスで、致死性の高いエボラ出血熱と同じ型。 …

悪魔のささやき

医師という仕事を始めて何年かたつと、救急外来の研修医からコンサルテーションを受ける機会が増える。 「咳が出て発熱している患者さんがいます」というコールに対して、 上級生が行うアクションはだいたい2種類。 上級生A:「じゃあまず病歴を取って診察し…

コンセプト51

白い巨塔が小説として発表された頃、医師は自信に満ち溢れていた。 患者さんへのムンテラの際、医師は胸をそらし、両手を大きく広げて父権を強調し、「大丈夫。私を信じてください」と話すことで患者さんとの信頼関係を築き上げた。 カリスマをベースにした…

高名の木登り

高名の木登りといひし男、人を掟てて高き木に登せて、梢を切らせしに、いと危く見えしほどは言ふ事もなくて、おるゝ時に、軒たけばかりになりて、「あやまちすな。心して降りよ」と言葉をかけ侍りしを、「かばかりになりては、飛び降るとも降りなん。如何に…

悪意の元気玉

人事異動のシーズンである。病棟の顔ぶれは一新し、なじんだ顔の研修医もいなくなり、新人が入ってくる。 勢い、この時期の上級生の話題は、新しく入ってきた研修医の話題が増えてくる。 どこの医局も、上級生の数は数人、多くても10人を大幅に越えることは…

鉄火場を乗り切る言霊

救急病院の病棟は急変が多い。 胸痛精査で入院した患者がショック状態、PCI中の患者のVf、喘息患者の急変などなど。 患者の急変は予想できない。後から振り返れば予兆はあったのかもしれない。「そんなこと、予想しておくのが常識だよ」などと、当事者でない…

相手からの信頼を得る

病棟で初対面の患者さん、またはその家族との交渉を行うとき、まず行わなくてはならないのが相手との信頼関係を築くことだ。相手からの信頼を勝ち得なければ、入院後の患者さんとの会話はぎこちないものになり、こちらの下す決断の全ては疑いを持って見られ…

有名病院研修医の予後が不良なことについて

有名病院で研修を受けた研修医が他の病院へ移ると、あまり幸せになれないことがあるらしい。 自分が研修を受けた病院は有名でもなんでもないが、卒業後の研修医のその後が、必ずしも幸福なものではないことは伝わってきた。うちだけかと思っていたら、よその…

地雷があったら踏んでみる

地方病院への急な派遣は厳しい。 不慣れな施設でいきなり救急業務をはじめる不安。バックアップ体制の不備、もし万が一のことがあっても自分をカバーしてくれるスタッフはもちろんいない。 歴代の先輩医師も、地方への派遣は皆「きついよ~」と言う。彼らは…

忙しい病院の思いで

中小規模の病院では、スタッフが数人辞めるだけで病棟業務が回らなくなる。 一般内科をやっていた頃は、なぜか周囲の病院がよく潰れかけ、そのつどヘルプ要員として駆り出された。 こうしたときに昔からとられてきた方法はこうだ。まずは入院患者を一定数以…

研修医制度見直し

ローテーション方式の研修制度がもう見直されるらしい。地方公立病院への派遣医師の減少の問題が顕在化してきたため、医師派遣システムとしての医局の力を見直し、現在のような卒業生の入局科選択の幅の広い制度を元に戻すという。 この1年間、ローテーショ…

偽の専門家

専門家のアドバイスを求めるとき、こちらとしては今の状況を打開するための方法論を示して欲しい。別に専門家の講義を聞きたいわけじゃない。その疾患に対する理想論を延々と述べられても困ってしまう。 偽の専門家は多い。肺炎を診察できない人工呼吸器の専…

上手くいっているものは変えてはいけない

病棟勤務医の移動の時期だ。これに伴い、外来患者さんを新たに引き継ぐ機会は増える。長く同じドクターにかかっていた患者さんのカルテを診ると、たいした病名でもないのに6種類も7種類もの薬を服用している人が時々いる。 どの薬剤もたいした薬効も期待でき…

時間切れ勝ちを狙う治療

物は壊れる。 機械が優秀ならば、どこか1箇所に些細な故障が生じても何とか動く。しかし時間とともにダメージは大きくなり、やがて致命的な故障を生じて機械はストップする。 機械を長持ちさせるには、なるべく早く故障を発見し、それを修理しなくてはならな…

病院にも専任の宗教家がいたほうがいい

小学生のテストの話。 塾にも通っていない、平均的な小学生があるテストで68点を取ったとする。 普段遊びに参加もせずに塾に通っている同級生は100点だった。 彼が、「君にしてはよくやったとおもうよ」とコメントをくれたら、その平均的な小学生はどう思う…

専門科コンサルトの問題点

大学病院で診療をしていく上での最大の強みは、全ての疾患の専門家が集結していることだ。 市中病院の連中にどう批判されようと、数は力だ。マンパワーはあればあるほどいい。そのうえ手を貸してくれる人が本物の専門家集団なら、もう無敵だ。 ところがこの…

研修医の勇気と責任感

勇気を育てる 研修医教育において、もっとも重要な要素が勇気づけである。 研修医の目には、上級生の能力は途方もなく大きく、有能に見える。そうした上級医に鍛えられながら、研修医は持ち前の勇気だけに頼って自分を支えている。 この勇気を支えてやるのが…

難民化した研修医の明日

ローテーション制度も、そろそろ施行後1年を終えようとしている。 この制度は、研修医が全ての医局を見られる。仕事のつらそうな医局、教育をあまり熱心に行ってくれなかった医局は敬遠される。研修医同士の情報交換を活発に行えば、「勝ち組み」医局と「負…

ゴールの設定

研修医を倒れるまで働かせるためのTips。 某高校のマラソン大会は、かつて(今もか?)富士スピードウェイで行われていた。 あのサーキットはバックストレートの長さで有名なのだが、サーキットを走って疲れ果てた頃、最終コーナーを回ってバックストレートに出…