書籍の訂正箇所について指摘をいただきました

販売中の「 内科診療ヒントブック 」という書籍について、今までにいただいた「ここを直したほうがいいよ」という指摘を、 まとめました。 いただいた言葉については、原則そのまま用いる形式とし、それに対して 作者側の言い訳(ずいぶん見苦しいのですが…)を付記しています。

この本を改訂する機会があるのなら、あるいは何か別の形で、原稿を公開する機会があったら、指摘をいただいた部分については、 極力原稿に反映させていこうと考えています。

専門家の方々から見て、訂正が必要な箇所は、まだまだたくさんあるかと思います。ご指摘をいただければ幸いです。

誤記について

「p264表のANCAはWegenerがPR3-ANCA, MPAとChurgがMPO-ANCAですので、逆になっていると思います」という指摘をいただきました。 これについては申し訳ありません、おっしゃるとおりであり、訂正をかける機会があったら、直していこうと思います。

「p255 PcPの表記が「ニューモシスチス」、「カリニ肺炎」と、統一されていないようです」というご指摘についてもまた、 将来的に「ニューモシスチス」で統一していこうと思います。

食道破裂について

食道破裂は治療可能な外科疾患なので、なるべく早く外科に振って下さい、という指摘をいただきました。このあたりは 鑑別診断チャート内に食道破裂の記載はあるものの、緊急の疾患である、という描写が不足していたように思います。 今後文章を改めようと考えています。

リウマチ周辺の表記について

「リウマチ性関節炎」「リウマトイド関節炎」は「関節リウマチ」の方が、「リウマチ因子」は「リウマトイド因子」のほうが、 それぞれ適切であろうという指摘をいただきました。このあたりもまた、次回以降の機会があれば、改めていこうと思います。

リウマチ性多発筋痛症の治療について

「リウマチ性多発筋痛症 PMR の初期治療「プレドニゾロン 30mg」は、少し多すぎる感じがします」、という指摘をいただきました。 CMDT にも、あるいは「膠原病診療ノート」という教科書にも、プレドニンの量は15-20mg で効果がある旨記載がありました。

このあたりは、「自分自身が昔30mgと習った」というところが大きいのですが、また次回以降、改めます。

TNF阻害薬、その他の薬について

リウマチ膠原病領域について、今回出版させていただいた本には、TNF阻害薬 、シクロフォスファミド、ミコフェノール酸 モフェチルによる治療についての言及を行いました。

査読をお願いした先生がたからも、「実際に普段使ったことのない薬剤について、どこまで言及を行うべきか?」といった指摘をいただき、 迷ったのですが、TNM阻害薬 については、当院周辺の地域では、整形外科の先生がたが普通に使い始めていること、 シクロフォスファミド については、呼吸器科の先生がたが、たとえば間質性肺炎の治療等でこの薬剤を使っていることなど、 病院の中で実際に目にする薬剤であったため、今回は記載を行いました。

ミコフェノール酸に関する言及は、踏み込みすぎであったと反省しています。次回以降、訂正する機会があれば、 その時の国内での使用状況を、もう一度調べてみようと思います。

顕微鏡的多発血管炎の表記について

「顕微鏡的多発血管炎(動脈炎)は、MPA(Microscopic polyangiitis)と略され、顕微鏡的PNとは略されないのが普通です」 という指摘をいただきました。これも次回以降、「MPA(Microscopic polyangiitis)」で統一する方向で訂正をかけていこう と思います。

血管炎の疾患概念について

MPAはWegenerと同じくANCA関連血管炎で「同じ箱」ですが、結節性多発動脈炎 Polyarteritis Nodosa PN or PANとは 「違う箱」に入っている、というのが最近の認識です」という指摘をいただきました。今回出版した本には、これらの疾患が、 言わば「同じ箱」に入っているかのような記載になっています。

こういった疾患の理解に関する記載は、ぜひとも次回以降、とり入れていこうと思います。恐らくは表組を変えることになると 思うのですが、対応できると思いますので。

小腸クローン病について

特に若い女性の不明熱を診察するときには、炎症性腸疾患を頭に入れておかないといけない、といった記載を、今回の教科書で 行いました。炎症性腸疾患を診断するための検査として、自分の書いた本の中では「大腸カメラ」を診断手段として挙げている のですが、これではもちろん、小腸の疾患を診断することができません。

小腸を診断するための検査として、小腸造影というものがあるのですが、小腸造影は、読影に慣れた医師が、できればその場に 居合わせないと診断が困難な検査であるため、記載をしませんでした。線引きが難しいのですが、「大腸カメラをお願い する」ところまでは一般医の仕事の範疇、小腸の疾患を疑って、それに対応した検査をオーダーして、それを解釈するのは、 もはや消化管の専門家が行うべき仕事であろうと考え、今回は記載を見送りました。

このあたりは、消化器の先生がたと、もう少し話を詰めてみようと思います。

「力が入らない」の診断チャートについて

「7.2 「力が入らない」で、PM/DMを取り上げておられるのですが、8.2 全身倦怠感の「診断チャート」部分にもCPKが 入っていた方が良いかもしれません」という指摘をいただきました。

全くそのとおりなので、これについても次回以降の機会があれば、訂正を入れていきます。

赤沈、フェリチン、尿沈渣

「p254 「わからないときには」の所に、鈴木先生の「チン・チン・チン」(血沈、フェリチン、尿ちんさ)を脚注で付け加えたい ように思います」という指摘をいただきました。こういうものが、標語としてすでに提唱されているものなのですね。。

まずは調べてみます。

「各科の普通」を持ち寄ること

恐らくはまだまだ、それぞれの専門家から見て、行き届かない点が多数あるかと思います。

この本はもともと、何か未知の状況に置かれた一般医が、患者さんを一刻も早く、その疾患を治療する知識と技量を持った 専門家に接続することを意図して、いろんな先生方に話を聞きながら、教科書を調べながら、書きためていた原稿をまとめたものです。

問題になったのは、病気の「見えかた」でした。

自分はたとえば、「鯨」という単語を聞くと、図鑑によくある構図、しろ背景に鯨の全身像が描かれていて、大きさを比較するため に、対象として人間のシルエットが描かれているようなものを想像してしまうのですが、世の中に実在する鯨という生き物が、 じゃあ白背景に空を飛んでいるかといえば、もちろんそんなことはありません。

これが自然保護を仕事にしている人であったり、海の上で活動する人たち、生きている鯨を普段から見ている人たちが「鯨」という 単語を聞けば、恐らくは自分とは全く違った情景が思い浮かぶはずです。同じ「鯨」という単語にあって、 バックグラウンドにある知識を持たない自分と、その分野が生活の場になっている人たちと、単語が持つ意味を共有するのは 難しく、それは恐らく、医療という、いろんな専門科に分類された世界であっても、同じような問題に起因する不備が、 この本の中にはまだまだたくさんあるのではないかと思うのです。

教科書を調べたところで、「それを日常にする」ことの情報量に到達することは困難です。お互いの知識に衝突があったとき には、もちろんそれを日常にしている人たちの感覚が優先されるべきなのは、論を待ちません。ところがそんな、 「言葉にするまでもないこと」というものが、教科書にはしばしば知識として記載されません。

これは総合診療を専門にしている先生がたですら、あの人たちもまた、「総合診療という専門分野」の住人であって、 恐らくは「全ての専門家の日常」と、「総合診療部の日常」とは、やはり近いけれども異なっている気がします。

「各科の普通」というものを、この本のような企画を通じて、お互い持ち寄れたらいいな、と考えています。

「この書きかたは自分の感覚とは違う気がする」という部分こそ、恐らくはこの本で真っ先に訂正すべき部分であり、 同時にそれは、筆者がぜひとも教えていただきたいと考えている何かでもあります。ご意見をいただければ幸いです。