コミュニケーション

危機コミュニケーションのゲームデザイン

公平は信頼の基礎になる。ところが災厄に代表される危機的な状況において、機会や配分の公平は、たいていまっ先に失われてしまう。 危機コミュニケーションの現場において、情報の発信者が唯一管理可能な公平は「ルールの公平」であって、信頼が重視されるコ…

「なぜ?」 の効用

従順な現場に支えられた組織は効率がいい。利益に向かって現場が自発的に「暴走」を行なって、あまつさえ自己責任で法を破ることも厭わないのなら、利益は勝手に増えていく。リーダーはメディアに向かって、きれいな理念を賢しげに語ってみせるだけでいい。 …

対等な関係は難しい

白い巨塔という医学小説は、主人公たる財前は悪役として、財前を告発した患者さん家族の味方となった里見は正義として描かれるけれど、あの物語において、財前はむしろ被害者であって、本当の悪役は里見なのではないかと思う。 対等と正義は相性が悪い 物語…

顔の見える距離について

外に対してある程度閉じた、小さな町で仕事をしていると、どうしても知った顔が多くなる。病院に来る人は、主治医に自分の情報を預けているわけで、病院の外で患者さんと出会ってしまうと、お互いどこか居心地が悪くなってしまう。 その町の本屋さんが外来に…

講習会覚え書き

最近参加した、某講習会での感想。新しいことを教えてくれる講習会というよりも、ある程度知っていたことを整理して、ひとかたまりの知識として提供してくれるようなものだった。有償。 スライド棒読みはそこそこ満足できる 研究発表よりも資格講座に近い講…

熱心な人は恐ろしい

それが敵であっても味方であっても、正義や熱意で動く人というのは恐ろしい。 損得勘定で動く人なら、立ち位置が異なっても会話はできるし、お互いの行動はある程度読めるけれど、正義や熱意で動く人はまず真っ先に損得勘定を除外するから、何が出てくるのか…

「普通」の標準偏差

「守り」のことを考えた際には、デモ行進や不買運動といった集団活動と、サービス業における接遇対応とは、注意すべきポイントが似かよってくる。 印象は裾野が決める デモ行進のようなアピール活動を、「普通に」行うことはとても難しい。訴えたい何かがそ…

「できない」がチームを作る

チームを作って何かするときに大切なのは、「できない」ことの把握なのだと思う。誰もがたぶん、何らかの「できる」を持ち寄ってチームを作る。「できる」はもちろん大切だけれど、お互いの「できない」を共有することで、個人の集まりははじめて、チームと…

会見記事を読んだ

島田紳助の引退記者会見 を文字におこしたものを読んだ。 一連の事実がきれいな物語として報告されて、きちんと管理された事実のみをを前提にした、突っ込みどころの少ない、自身が頭を下げる必要のない見解を組み立てているような印象を持った。 きれいな物…

曖昧さという対立軸

上司にとって、曖昧な指示は武器になる。 「臨機応変に」やってくれだとか、「患者さん第一に現場の判断で」考えろといった指示を出すことで、上司は部下に対して「当たりくじだけ持ってこい」と命じることができてしまう。 あいまいさは便利 成果を厳しく問…

賞賛の採算性

夏休みになると日記の宿題が出て、あれが嫌で嫌でしょうがなかった。 日記が大好きな子供なんて、今でもたぶん、決して多いはずがないのに、インターネットで文章を書く人はびっくりするぐらいに多い。 日記にはない、ネットが持っている大事な機能が「他人…

砂場としての2ちゃんねる

ネットは年々厳しくなっていくように思える。 ルールは昔を引き継ぐものだから、昔からいる人たちはすでにルールを知っていて、ルールはますます複雑に、あとから入ってきた人には分かりにくいものになった。ネットワークでできることはずいぶん増えて、ネッ…

説得の技術について

踏み込んだ解答は難しい 資料を調べて、何かを書いて発信するときには、まじめに資料を調べるほどに、踏み込んだ意見を述べることが難しくなっていく。 何かを発信する際には、「こうだ」と断言してみせないと迫力がでないし、何よりも書いている本人がつま…

危機の対応と機会の対応

外乱と遭遇した際の対処には、「危機の対応」と「機会の対応」とがあって、目指すべき目標や、優先すべき物事が異なってくる。 危機管理者がまず行うべき仕事というものは、「それが危機である」と認識することで、危機と機会との区別に失敗すると、あとから…

想起のポイントを統一する

実際に試したことはないし、それを試みて成功している事例を耳にしたこともないのだけれど。 「あぁ」という体験のこと 自分は普段、患者さんのことを、病名と処方で思い出す。問い合わせに対して、その人の名前や住所を伝えられても、その患者さんのことを…

乱暴な言葉の使いかた

状況に火がつくと、たいていの人は足がすくんで立ち止まる。不明の状況にあって、動くことを決断するのは大変で、止まるとたいてい、状況はもっと悪くなる。 最初に動いて、乱暴な言葉で大声を張り上げて、背中を押せる人が、だから必然的にリーダーになる。…

下段の間合いを削る人

誰かに病状説明をするときには、その人と自分との「間合い」に気をつけるようにしている。とても丁寧な応対を繰り返しつつ、間合いを削ってくる人と、間合いの全く変わらない人とがいて、間合いを削ってくる人には、企業を運営している人からラーメン屋さん…

何かを呼ぶには3人必要

何かを信じたり、誰かを臣事させたりするときには「3人」というのがマジックナンバーになっている。2人と3人との違いがとても大きくて、1人と2人との違いというのは、それほど大事ではない気がする。 こっくりさんを呼ぶ儀式 典型的な「こっくりさん」の儀…

共通言語としての損得勘定

誰かと共同作業をするときには、最初の入り口として「私は損得勘定という言語で会話が可能な人間です」という挨拶が欠かせない。 損得勘定は、その価値こそ低いかもしれないけれど、それを理解できる人は最も多い。誰かと協力して行く中で、「良さ」とか「正…

負けるのは大事

学校で学ぶべき、学校でしか学べない大切なものというのは、「負けかた」なのだと思う。 負けるというのは誰かの価値を受け入れることで、学びそのものでもある。負けかたを知らない人が社会に出ても、負けられないから、致命的な立場に追い詰められるそのと…

悪役の深度について

与謝野大臣が記者会見の席で、「原発を推進してきた立場として今回の事故に謝罪をするつもりはないか」という記者の質問に対し、「ないです」と述べた 。 この人は以前にも、積極的に増税を、と主張していた。恐らくは与謝野大臣は、あえて悪役を買って出る…

災厄に関するメモ

データは見解を覆せない。生データの公開は、メディアの「ねつ造」報道に対するカウンターとしては弱すぎる。それを出すことはもちろん正しいし、心理的な牽制の効果を期待することはできるにせよ 生データはたいてい大きすぎる。発信する側は、データを提供…

危機コミュニケーション覚え書き

最近の報道を見て思ったことなど。 未知状況で安心を伝える 原発災害の当初、情報が錯綜して、不安になった。そんな頃に発信された、日本の原発についてのお知らせ という、英国大使館の現状に対する見解をまとめた文章を読むことで、大きな安心感が得られた…

相手から見える風景を想像する

誰かを説得しようと試みるときには、その人から見える風景の中にあるものを使った説明を行わないと、成功しない。 同じものを見ていても、見えかたは人ごとに全く異なる。その人が物事をどう見ているのか、それを想像して、その人から見えた風景を材料にして…

説得は半径1mから

英国の元副首相にして運輸大臣でもあったジョン・プレスコットが、TopGear の対談コーナーに出演していた。 この政治家がどんな人であったのか、自分は何一つ知らないのだけれど、対談は素晴らしく面白かった。 対談 TopGear は人気の高い自動車番組で、政府…

電話帳の断絶

数クリックと1クリック、1クリックとゼロクリックとの間には断絶があって、何かに到達するための最後の数クリックは、一つ減るごとに全く違った文化が生まれる。 解剖実習 解剖実習を始める前に、ご遺体のCTスキャンを全身撮影しておいて、それをiPad に入れ…

「何でも」は止めたほうがいい

スタンドアロンが主、ネットワークが従であった昔は、「できる」ことに大きな価値があって、絶対にやり遂げること、何でも「できます」と返事することが武器になった。 様々な技能のネットワーク親和性が高まって、たいていの問題は、いくつかの選択肢から解…

呼び出しの作法について

もともと認知症があったりして、夜中に不穏になって、大声を出したり、点滴を引き抜いてしまったり、ひどいときには点滴棒を振り回したり、病棟の人員ではどうしても手に負えなくて、夜中にご家族をコールせざるを得ない機会が時々ある。 こんなときに、「○○…

リーダーシップの軸足

リーダーシップというものは、「組織を作るのが上手な人」、「動機付けが上手な人」、「アイデアを出せる人」というのが3大要素で、「人の上に立つ」リーダーという、古典的なリーダーの風景に一番違和感が少ないのが、組織を作るのが上手であるリーダーシッ…

集まりや盛り上がりを支えるもの

エジプトの市民革命は、ピーク時には数万人もの人々が広場に集まって、集会は20日間近く続いて、大統領を退陣に追い込んだ。 ああいう大きな人の流れは、もちろん政府当局に対する市民の怒りがあったのだろうけれど、あれは「数万人規模の人々を20日間、広場…