小話

悪役には「ずれ」がある。主役には欠落がある

漫画原作者である小池一夫 さんの「主人公には弱点を。敵役には欠点を」という教えは、シンプルなのにとても深いなと思う。物語を作る側ではなく、読む側からそれを改変すると、主役には「欠落」を、敵役には「ずれ」を、になるのではないかと思う。 悪の組…

「ない」ことと「必要ない」こと

単なる自由には意味がない 自由というものは、不自由が作り込まれてはじめて意味を持つ。 飛べるようになった人間は、飛べない人間に比べればたしかに自由かもしれないけれど、「行く手を阻む壁」や「飛び越えられない谷」が存在しない現代社会なら、鳥人だ…

美談の受益者について

認知症の老人が紙幣の代わりにティッシュペーパーを出したときに、素晴らしい対応をしたレジ打ちの人がいたという記事 を読んだ。 ヘルパーの方と街を歩いていたおじいさんがハンバーガーショップに入り、会計の時に「紙幣」として取り出したものがティッシ…

書き出しは難しい

Twitter だと気軽に書ける何かをどれだけ積むことができても、ひとかたまりの「論」として、それをまとめるのが時々難しい。難しさの根っこにあるのは「書き出し」であって、アイデアの品質それ自体は、「論」の誕生確率それ自体には、たぶんあんまり関係な…

クレーム対処について

クレームに正しく対処するためには、そのクレームに対して「正しく恐れる」ことが大切になる。 恐れかたは、少なすぎても、多すぎても、トラブルを生む。正統なクレームに「毅然とした対処」を行うことはトラブルを生むけれど、ちょっとしたクレームに対して…

参考書を雑誌化してほしい

これからの参考書が、電子書籍の形式を目指していくのなら、参考書本体を出版するだけでなく、その参考書に対する様々な識者の「突っ込み」を、雑誌の形で提供できたら、きっととても面白い。 電子書籍は便利 たとえば聖路加国際病院の研修医マニュアルや、…

手の汚しかたを考える

何らかの望ましい習慣に、確実な履行を期待しようと思ったならば、それを行ったことによる報酬よりも、それを行わなかったことによる不利益が明らかになる仕組みを作るとうまくいく。 手洗いは大事 病院において、手を洗う習慣は、とても大切なものであると…

ハイパーリンクの読書体験

新しいメディアを広めるためには体験の変化が必要で、変化を実感させるために必要な機能というものは、案外地味なものが役に立つ。 CTスキャンの昔 画像の電子閲覧システムを導入する施設が増えたけれど、昔はもちろん、レントゲンと言えばフィルムだった。…

惰力と能力

最後には絶対的な壁が立ちはだかるにせよ、能力の不足というものは、「惰力」で補うことができるのだと思う。 自らの意志で判断したり、決断を行って成功する人はかっこいいけれど、自ら動くあのやりかたは、正解に遠いというか、成果に支払うリスクが必要以…

中心は黒がいい

ずるい人は得をする。得があるから人が集まって、人の集まりが組織を作る。組織の真ん中にはリーダーがいて、リーダーはもっともずるい人だから、リーダーはたいてい、黒から始まる。 黒は仲間を増やす 黒い人のまわりに人が集まった人達も、外から見ると黒…

偏見を獲得すること

「使える」人、能力を持った人という考えかたは、「問題の解決にあたって実用的な偏見を獲得した人」と言い換えてもいいのだと思う。 頭の棚は便利 知識を習得する際に、「この知識はこの場所に」という、頭の中に知識の居場所を作ってから教科書にあたると…

人と機械との関係

舞台になるのは、無人操縦ができる程度の判断力を備えた車が走れる近未来。映画「ターミネーター」のスカイネットみたいに、意志を持ったPCがネットワーク越しに様々な制御を行っている設定。 動機はなんでもいいと思う。「環境にとって人間が邪魔だった」で…

陰謀論と理解

子供の頃、テレビや漫画で描写される政治家の姿はといえば、「馬鹿」であったり「無能」であったり「金の亡者」であったり、いずれにしてもろくなイメージではなかったような気がする。何もできない子供だったくせに、政治家をどこか「見下して」いたものだ…

何を「やらない」のかを考える

「これをやりたい」は願望であって、そこにたどり着くための「やらないこと」を決断して、願望はようやく、戦略としての意味を持つ。 「やらない」を決断したその先には、必然的に不利益を被る誰かが存在するから、戦略を決めることは、たいていの場合「誰を…

丈夫なシステムについて

大学病院に入局した昔、田舎の電源事情は妙に悪くて、停電は日常だった。雷が落ちると病棟の電気が消えて、エレベーターに看護師さんが閉じ込められたり、大学のインフラは案外貧弱だったのだけれど、業務はあまり止まらなかった。非常用発電機の音を聞きな…

聞く仕事のこと

ホームセンターにドリルを買いに来る人は、本当はドリルが欲しいのではなくて、「穴」がほしい。穴をあけるのにドリルは必要ないかもしれないし、棚を作ったり椅子を作ったり、穴を使って達成したい何かには、もしかしたらそもそも、穴なんて必要ないかもし…

間違った「論」には意味がある

勉強は大切だけれど、正しい知識だけを積むのは危ない。 武道を学ぶ際には、受け身の学習が欠かせない。正しい知識を学ぶときにも、正しくない知識の受け止めかたを知らないと、学ぶほどに大けがをする可能性が増えていく。 正しいことと説得できること 正し…

問題と向き合う態度について

それが勉強であっても遊びであっても、何かの問題に対峙したときには、まずはその問題とどう向き合っていくのか、自分の覚悟というか、計画を「これ」と定めておかないと、努力を積むときの効率がずいぶん変わってくる。 人間の先を超えた人 難しすぎて、人…

価値の判断は面倒くさい

「それが自分にとって面白いのかどうか」を判断するのは面倒な仕事で、人間は、その気になればどこまでも怠惰になれる。 流行しているサービスや、景気の悪いときでもお金を生んでいる産業というものは、そうした面倒くささを回避する仕組みを持っている。顧…

状態を動作で記述すること

「アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 」 という本の感想。続き。 チェックリストを作ることの効果というものは、「正常」を言語化できることにあるのだと思う チェックリストを作るときには、たとえば「○○が正常に接続されていることを確認する」…

チェックリストについて

「アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 」 という本の感想文。 コンサルタント方面の書評サイトで取り上げられていた本だけれど、作者は外科医だった。翻訳した人も、米国で医学生をしておられるのだと。 チェックリストは大事 ちゃんと作れば、チェ…

ロバストネスとゲーム性

自然災害や悪意を持った第三者による攻撃、「うっかりした」、あるいは「運が悪い」職員によるヒューマンエラーは、すべてシステムを攻撃する外乱であると言える。外乱に対する安定性、ロバスト性の高いシステムを設計する際には、システムを「ゲームとして…

少しだけいいものが選べない

豊かになると、いろんなものが相対的に安価になっていく。ところがある業界が細っていく過程のどこかに、「少しだけいい製品が選べなくなる」という状態がたいていあって、ものが安くなることと、選択肢が減っていくこととはわけて考えないといけないのだろ…

不思議なものとのつきあいかた

「不思議なもの」は、今の世の中にだってたくさんある。それが証明された事実なら利用すればいいし、虚偽なら否定すればいいけれど、「不思議なもの」はそのどちらでもないものだから、距離を置いて「つきあう」ことが大切になる。 「不思議なもの」と対峙し…

悪い知識は大切

道徳は大切だけれど、道徳的な人間を生み出そうと思ったときに、道徳だけを教えたのでは片手落ちなのだと思う。道徳というものは、不道徳な「悪い知識」を土台にすることで、初めて堅固な力を持てる。 道徳の効用 理念や道徳というものは、「手続きに従えば…

コンテストのドレスコード

コンテスト形式によるアイデア探索を成功させようと思ったら、チームのドレスコードにも気を配る必要がある。負けられない看板を背負ったチーム、学会の名前で参加したチームや、サークル名を持たない、大学名をそのまま背負ったチームがコンテストに参加し…

「新聞の裏側」というサービスがほしい

メディアとしての新聞が、報道を通じて、裏側でどんなことを考えていて、世の中をどういう方向に持って行きたいのか、報道された記事だけを追っかけていても、なかなか見えてこない。 裏側の思惑みたいなものは、むしろ「報道されなかったこと」を通じると見…

出会いの効用

何かを探すのと、出会うのと、そこに到達する手段が異なると、自身が受ける影響もまた異なってくる。 偶然の出会いを期待するのに比べれば、探すやりかたは圧倒的に効率がいいけれど、ランダムな何かを摂取することは、効率以上に重要であることも多い。 本…

タスクの階層化について

Google が提供しているToDo のサービスが、個々のToDo を階層化して管理できることに気がついてから、けっこう便利に使っている。 単純なリストを並べるのと、それを階層化するのとでは、ことにToDo リストにおいては意味合いが大きく異なってくる。階層構造…

評論について

単なる感想文と、評論とを隔てているものは、「トレードオフの可視化」の有無であって、分野の文理を問わず、評論を名乗る文章を書く人ならば、まずはこれをやってほしいなと思う。 軽量化のジレンマ 大昔、日野自動車がトラックの軽量化とコストカットを目…