2005-01-01から1年間の記事一覧

真名と忌み名と

白衣の裏には名前を隠す 人に頼られるというのは、基本的にはとても怖いことだと思う。 内科の外来。毎日初対面も同然の人たちがやって来ては、自分達の問題を赤の他人に語る。 もちろんこちらを信用してくれてのことなのだけれど、その話を受ける自分が十分…

盤外戦のしかけかた

公平なルールで気分良く戦うためには、盤外の戦いに最善を尽くさないといけないという話。 女子フィギュアスケートで五輪代表に3選手が決まったが、25日の「全日本選手権」を見て、なぜ、6位の安藤美姫選手が選ばれたのか、釈然としない人は多いはずだ。ネッ…

期待の消失と医療の恐慌

最近の小児医療崩壊とか、僻地医療の崩壊といった話題というのは、 社会全体の大きな問題なんかじゃなくて、医師同士の狭い社会の ローカルな問題なんじゃないか。そんな妄想。 子守協同組合のお話。 何人かが集まって、お互いに子守をしあおうと合意しあっ…

偽医者稼業は効率がいい

ローリスクハイリターンの医療詐欺 偽医者をやっていた人が逮捕された。 評判は良かったらしい。たぶんそんなに大きなトラブルもおきてはいないはずだ。 偽医者という「仕事」は、リスクの割りに得られるものが大きい。もちろん犯罪ではあるけれど、 いろいろ…

ILCOR-CoSTRおよび関連資料の粗訳

ILCOR-CoSTRおよび関連資料の粗訳 2005年の心肺蘇生のガイドラインの和訳を作ってくれた人達がいた。 自分でやり始めなくて本当に良かった。 ガイドラインの発表が2005年の11月末。早速海賊版を…と思ったが思いとどまり、 どうせどこかで和訳を始めるグルー…

真空の生む大きな力

平等で無気力な集団 「市民」とか「みんな」とか、大人数の集団に何かを訴えて、力をかしてもらうのは難しい。 大人数の集団に何かを訴えるなんて、空気に突っ込んでいくみたいなものだ。 何かをやろうとして助けを求めたところで、みんなよけるだけで何も変わら…

みんなと同じことをするという戦略

「みんなと同じことをする」しかいない国は、危ない。 中心が腐った場合、その腐敗を食い止める力がなく、腐敗がひろがる一方だからだ。 バブルも、欠陥マンションも、そしてファシズムも、そのようにしてひろがる。 腐敗した権威や確信犯はもちろん悪いが、そ…

正しいやりかたの復権

皆の声を集めることぐらいバカらしいことはない。 環境保護とか、イルカを救えとか。なんだか胡散臭いスローガンに酔った連中が、 今でも道で叫んでる。 みんな目線が狂ってる。もうバリバリ(死語)に自己啓発入りまくり。 この手の連中は、目的を達成するの…

体育会という議論手法

空気が読めない人が増えている 正しい論理ばかりまくし立てたってしょうがない。 議論というのは、論理だけでは勝ち負けは決められない。 肺をみる医者。骨をみる医者。外科と内科。先輩と後輩。 集中治療室では、様々な立場の人が、様々な「看板」を背負って…

削る研修と育てる研修

民間病院の臨床研修 1年生の頃はひどかった。 入職してから、オリエンテーションに10日間。そのあとは、右も左も全く分からない病棟でいきなり30人持ち。 できるわけが無い。患者さんの把握をしようにも、名前一つ満足に覚えられない。新患など入った日には…

マインドマップでお仕事

しばらく前からマインドマップでカルテを書いている。 集中治療室には、いわゆる「カルテ」は担当する科の主治医がつける。ICUの医師は交代制なので、 その日の朝のミーティングから、次の勤務帯に引き継ぐまでの間の覚え書きをつけるだけ。 何かイベントがあ…

HFOVの原理と臨床

プレゼンテーションを作った。 来週から実際に使う。 HFOVの原理と臨床 興味のある人、何人ぐらいいるんだろう…。

HFOVクイックガイド

現在、うちのICUには R-100という呼吸器のデモ機が入っている。 この機械はHFOV(高頻度換気)という小児科で使われる古い呼吸器モードを 備えた呼吸器なのだが、成人でも使えるだけのパワーを持っているところが 新しい。 BILEVELが広まって以後、人工呼吸器…

初心者の手技はなぜ怖いのか

エルステ寿司 昔の外科では、どこの病院でも「エルステ(初めての)寿司」という 習慣があった。 初めての虫垂炎。初めての胆摘。若手の外科医がなにか新しい手術の執刀医となったとき、 あるいは新任の外科の先生が新しい病院での第一例の執刀医となったときに…

転職先で教えてくれない3つのこと

勤務先で「いい人」になるために 勤務する科を変更して1ヶ月。 もともとの循環器内科から、いまは集中治療室。 1年生の頃から、外科をやったり、救急をやったり。いくつもの科を転々としてきたけれど、もう慣れた。 新しい職場に移るとき、迎えてくれる側は…

アナログ評価の検査

大動脈圧波形 いま働いている集中治療室では、患者さんのほとんどに動脈ラインがつながっている。 動脈ライン。右の赤いのが波形。 動脈ラインはいろいろなことに使える。血圧や脈拍数は24時間連続して測れるし、 採血も楽だ。24時間体制のICU、1日に4回も5…

情報伝達の遅延と多様性

勤務先で変な風邪が流行っていて、この2日間身動きとれず。気管支からやたらと「いい痰」が出て、 培養に出したらなんか生えるんじゃないかと…。 エンダーのゲーム 寝てばっかりだったので、エンダーのゲーム というSFを読んでいた。 内容はありきたりの宇宙戦…

分かりやすいマニュアルへの試行錯誤(2)

分かりやすい/読みやすいとは 以前書いた病棟ガイドもいいかげん古くなったので、今年こそ内容を書き改めたい。 できれば、もうすこし分かりやすい内容で。 洗脳とか、ゲーム脳化とか、そういった下衆な意図無しのやつを。 工業製品の取扱説明書は、読者に「…

分かりやすいマニュアルへの試行錯誤(1)

あるセカイ系の妄想 内容さえすばらしければ、1つの文章、1冊の本というものには世界を変える力がある。 そんな童貞臭いセカイ系の戯言を、昔は本気で信じてた。 研修医だった当時、聖路加だの虎の門だの、大手のブランド病院は「研修医が書いた」と称する レ…

論文を書くということ

昨日のおしゃべりのまとめ。 アカデミズムに背を向け、ただひたすらに患者様中心の医療に邁進すのは、 全然かっこいいことじゃないです。 臨床のことだけ、治療のことだけ考えて医者をやっていくという選択肢は、 何の覚悟もいらない、楽な道を選択するとい…

ネットワーク化した病院の未来

救急外来のつらさの変化 救急外来の当直空け、朝の5時ごろに煮詰まったコーヒーを飲む頃には 白衣が血まみれだったのは今は昔。 地域の大病院に勤めるということは、その地域に住んでいる人たちの生き死にに対して、 無限責任を負うというのに等しいことだっ…

患者の渋滞について

直線道路でも渋滞は生じる 大学の研究者であった父親が、国土交通省に呼ばれたことがある。 当時の専門は、音響工学だった。 問題点は、交通渋滞の対策。障害物のない道路で、なぜ渋滞が生じ、どう対策すればいいのか。 渋滞中の車の振る舞いというのは、音…

最新の治療は最善ではないかもしれない

医療の進歩は過去を内包している 医療は進歩する。診断技術。モニタリングの技術。新薬や、新しい治療手技。 医療の進化のプロセスというのは、進化論で言うところの断続平衡モデルに似ている。 進化は、長期間の平衡期と、短い急激な変化期とを交互に繰り返…

情報化はマンパワーの差を覆せるか

マンパワーの差を覆すには 厚みで押し切るのが好きだ。圧倒的な物量でもって、相手に止めを刺すまで追い詰めるのが好きだ。 大きさは力だ。マンパワーの乏しい組織、物量の乏しいチームというのは、 大きなチームにはかなわない。 対立するチームの規模が数…

ベッドはどこへ消えた?

ベッドが足りない 医療はどんどん自由化している。大きな病院、救急を断れないような地域の市中病院というのは、 患者さんの疾患を限定できる専門施設に比べて不利だ。小さくて、小回りの効く施設は、 一番「美味しい」患者さんだけにサービスの対象を絞れる…

先生に全てお任せします

医者みたいに生ものを扱う業界では、同じ事をすれば同じ結果が返ってくるとは限らない。 合併症は避けられない。結果責任を求められると、すごくつらい。 人間相手の仕事には、絶対はない。特にそれが、生きる死ぬにかかわってくることならばなおさら。 全力…

魂消える演劇というもの

演劇を見るのもやるのも恥ずかしかったのは小学生の頃。 作り話を楽しまず、斜に構えるのはかっこいいことだった。空気の読めない子供はせっかくのライブ演劇(昔は3ヶ月に1回ぐらい、体育館に劇団が来てくれた)を楽しまず、奇声をあげたり歩き回ったりして、…

中国にいってきた

夏休み 動機は単純。パンダを見に行こう。 準備なんか何も考えていなかった。 先の読めない仕事。遠い先の予定をいれると、 予定直前になったとき、締め切り効果で判断ミスの可能性が増える。 幸い、現地のガイドさんにはつてがあった。「いつでも大丈夫です…

消毒された世界

子供の頃のお祭りは面白かった 子供の頃の夏祭りは、特別な空間だった。 熱心に踊る人。色とりどりのテキ屋の屋台。酔っ払った大人。 暗闇のなかに照らし出される、盆踊りのやぐら。 暗い夜は慣れていた。当時の小学生は、塾通いは当たり前。電車に乗って、…

カオスの縁を目指したフォースの意思

ジェダイの騎士はなぜ弱いのか ジェダイは弱い。どうしようもなく弱い。 正義が勝てる場面は何回もあった。さっさと議長を殺害できれば。 クローン軍の契約を打ち切って、もっと別の方法を探れれば。 ヨーダのやっていたことは、水戸黄門と同じ。 無敵に近い…