臨床研修

研修期間中の勉強について

研修医の期間に行う勉強は、将来にわたって学習を続けていくために必要な、「健全な偏見」とでも言うべきものを養うために行われるべきなのだと思う。 偏見は学習の道具として役に立つ。どれだけ優れた大工さんであっても素手で家を建てることが不可能なのと…

自己紹介の戦略要素

「私はこれが得意です」という自己紹介は、わかりやすい代わりに役に立たない。「これが得意」は戦術レベルの長所であって、戦略が見えてこない。何かが得意な人がいて、ならばその人はどの分野をの習得を諦めたのか、「私はこれを得意分野にするために、代…

研修医の潰しかたを考えよう

平和を実現したいのならば、戦争に関する学習が欠かせない。 平和を願うのは大切かもしれないけれど、戦争のやりかたを知らないと、攻める相手をどうすれば止められるのか、相手の軍隊に動きがあって、それに対してどう応対すれば、そこから戦争につながる道…

泳ぎかたと溺れかた

本当に溺れている人は、溺れているというよりも、むしろ静かに沈んでいく ものなんだという。 それを体験したことのない人が「こうだろう」と想像したことと、実際それに遭遇したときに起きることは しばしば異なっていて、見張る側は、もちろんそれに気をつ…

ドクトリンを学びたい

ワシントンマニュアルという、ずいぶん昔から改訂が重ねられている教科書の33版を読んで考えたこと。 差分を知るのは大変 ワシントンマニュアルの33版はずいぶん厚くなっていて、今回のは1000ページを超えていたけれど、内容の骨組みみたいなものは、それほ…

経験の伝達には触媒が必要

ベテランの先生がたが持っている知識だとか、経験を若手に伝えるためには、伝えるベテランと、学ぶ若手と、もう1人、その場の道化役、経験伝達の触媒役としての、中間層が必要なのだと思う。 あってはならない話が聞きたい 症例検討会みたいな場所での演者は…

高重圧環境で正しく振る舞う

プレッシャーの大きい状況で、普段どおりの振る舞いかたをするのに必要なもの。 若い患者さんを見るのは怖い そもそも本当は、そういう「差別」みたいなのがあってはならないんだけれど、「怖い患者さん」と「そうでもない患者さん」というのは、どうしたっ…

名人の資質

「名医であること」や「名人であること」には定義があって、定義だとか、理論を知らないことには目指すことができないし、その人が置かれた状況によって、磨くべき能力も異なってくる。 医療の円環構造 「医療」においては、病歴や、家族歴の聴取に相当する…

「当直医学」を作ってほしい

できれば雑誌の連載とか、なにか公的な文章として残る形で。 「総説」は役に立たない 患者さんはみんな違うから、医療という分野においては、 議論の土台になる「一般」というものが、定義できない。 病気についてはだから、「一般的にこうだと私は思う」と…

Open Office で症例報告スライドを作る

だいたい10枚、急に頼まれたときなんかに、最小限の手間で、平凡な資料を作るやりかた。 表題、入院時病歴、理学所見、検査データ、画像所見のスライドが2枚ぐらいで、 だいたい7枚。あとは経過表を作って、考察を2枚ぐらい入れると、だいたい10枚になる。 …

ドッグフードを食べる

コンピュータープログラムを開発する人たちには、開発途中の未完成なプログラムを無理矢理使って仕事をする 時期というものがあって、それを「自分のドッグフードを食べる」なんて表現するらしい。 自分が今作っているものは、コンピュータープログラムほど…

勉強が楽しくなる

このところずっと、内科の勉強が楽しくて、他のことが手につかない。 そもそもが勉強嫌いで、昔は論文を一生懸命読んだけれど、最近はそれも面倒で、 せいぜいが日本語の教科書を月に何冊か、面白そうな分野をつまみ食いする程度だったのだけれど、 今月に入…

検査に対する富豪的態度

たとえばCTスキャンのデータ、人体の、何十枚もの「輪切り」写真から、 あらゆる異常を探し出すためには、病気に関する知識、人体の解剖に関する専門的な 知識は欠かせない。 ところが「気胸の有無」を調べるためにCTスキャンを切ると、そこに気胸があるのか…

「分からない」から始める医療

「トップナイフ」という、外傷外科学の教科書から。 外傷性ショックという状況 ショック状態というものを理解しなくてはならない。血圧が60mmHg に低下した患者に対して、皮下の出血点を一つ一つ焼くような外科医は、外傷外科に向いていない 出血と虚血とで…

臨床研修制度見直し

臨床研修制度見直し 医師不足に一定の改善効果も - MSN産経ニュース 来年度から、研修制度がまた見直されて、今度こそ、各地域ごとの受け入れ可能研修医数に「上限」が 設けられるらしい。 まだこのとおりになるのかどうかは分からないけれど、実施されると…

やりかたは無数にある

「絶対に正しい手順」というものは、一つに決められないのだと思う。 現場にあって「絶対」と言い切れるものは、状況を乗り越えるための「目的」と、 それを達成する上で「制約」であって、「手順」というものは本来、 「こうしたらたまたま上手くいった」と…

「制約指向」メモ

ある種の制約は自由を増やす。ある種の自由は人間の負担を増す 毎回考えていると負担になることを「制約」としてまとめることで、プロジェクトの戦略的な実施や、バグの地獄からの解放という「自由」が得られる プログラム言語にとっての「勇気」とは、プロ…

若い人はご飯が遅い

外来もようやく一段落して、14時だとかその後半だとか、ずいぶん遅い時間になって、 アルバイトに来てくれている若い先生がたは、やっとお昼ご飯を食べに、医局に戻ってくる。 ベテラン勢、それでも自分が一番年下なんだけれど、この仕事をずいぶん長くやっ…

現場の能力を「上」が把握するのは難しい

来年度の研修医がますます減りそうで、県内にある基幹病院の先生が、大学のことを憂慮していた。 来年度の研修医を獲得するために、大学は、たしかに多様な研修プログラムを準備しているみたいで、 たしかに大学の「上」にいる人達は、成果を見込んだ努力を…

証拠の時代の振る舞いかた

機関銃が世の中に登場して、それはもちろん極めて効率的な道具だったから、 すぐに戦争で用いられるようになった。 異民族との戦争では、機関銃は、時に100倍もの戦力差を跳ね返す活躍を見せたから、 現場の兵士はその武器を大歓迎して、それでもなお、将官…

診断学のこと

診断学の本を読んでいる。 ベイズ推定が主流になるのか、どの本も、「総論」のところに統計学的な疾患推定のやりかたが解説されている。 「蹄の音を聞いたら馬だと思え。シマウマを探してはいけない」だとか、医師の思い込みだとか、 先入観で診断を行うこと…

電子カルテをネットワーク化してほしい

個人情報の問題が大きすぎるから実現は難しいけれど、 やっぱりいつかは、電子カルテをネットワーク化して、医師同士、あるいは 患者さんが、いろんなカルテを相互に参照できるようになってほしいなと思う。 思考を拡大する道具としてのコンピューター 「知…

輸入された価値観のこと

ほんの10年ぐらい前まで、感染症の治療には「広く効く新世代抗生物質」を使うのが常識で、 自分が研修した病院みたいに、旧世代の抗生剤を大量に使うやりかたは、当時はまだ珍しかった。 大学に移ったばかりの頃、連れて行ってもらった学会で、肺炎治療のフ…

ヒトデはクモより強い

医局のお話。 医局が独立国家だった時代があったんだと思う 「白い巨塔」時代の大昔には、大学病院だとか、大病院だとかの偉い先生方は、 どういうわけだか地元警察とか、国会議員なんかに知りあいがいて、 自分たちが率いている組織に何かトラブルがあった…

フェアプレーの正しさ

研修医になりたての頃は、「お菓子の家」に迷い込んだような気分。 検査室は24時間フル稼働してたし、けっこう大きな病院だったから、CTだとかMRIだとか、 民間病院の割には、当時としてはずいぶんいいものが入っていた。 何だって診断できる、何億円もする…

酒の切れ目は技術の切れ目

8年ぐらい昔。技術継承のために飲み屋さんを利用している地域があった。 誰か有名な先生を他の地方から招聘して、「つぼ八」みたいな飲み屋さんを借り切って、 ただひたすらに飲む会。 有名な医師の講演会とか、偉い人のありがたいお話とか、そういうのは抜…

「乱暴な当直マニュアル」を作りたかった

出版をもくろんで、いろいろあって潰れた企画。研修医向けの、「翌朝まで」を乗り切るための本になるはずだった。 各科の言い伝え 都市伝説にも届かないような、いろんな先生方から聞いた、乱暴な一言。 腹痛の患者さんは、絶食して抗生物質と十分な輸液を入…

かっこ悪いことは本当はかっこいい

どんなベテランでも判断ミスから自由になれないし、油断すれば失敗する。患者さんに怒鳴られたら 腹も立てるし、相性のいい研修医とそうでない研修医、神様じゃないから、平等に接することなんてできない。 ときどき完璧になれても、常に完璧でいられる人な…

きれいの弊害 洗練の誤謬

医療みたいな不確定要素を相手にする業界は、「模範的な医師」を想定してはいけないのだと思う。 症例検討会のこと 研修医が患者さんを受け持って、必然と、偶然と、病棟でいろんなことが重なって手術になる。 珍しい病気だったり、病理学的に「きれいな」症…

人生に必要なことはすべてゲームセンターが教えてくれた

始まりは駄菓子屋の裏 ゲームセンターに入り浸るようになったのは、インベーダーブームの後期。 町のゲーセンは真っ暗で、大人の溜まり場。 小学生には敷居が高くて、みんなが集まるのはいつも駄菓子屋の裏。 日曜日の朝なら監視が薄くて、電源コンセントを…