理念とは卑怯の提案

30年以上も昔、担任の先生が産休に入って、代打要員として、音楽の先生が県から派遣されてきた。ちょうどその頃、県の音楽コンクールが重なっていて、「どうせでるなら勝ちましょう」なんて、いろんなことを教わった。 柔らかい音を出す 「トライアングルを…

新刊のお知らせ

レジデント初期研修用資料 医療とコミュニケーションについて という本を出版させていただくことになりました。 文章からは極力医学用語を減らし、医療従事者だけでなく、様々な業界の人にも楽しんでいただけるようなものを目指しました。病院でのエピソード…

嫌われる相手のことを考える

製品の開発であっても、サービスであっても、何か新しいものを作るときには、誰かに好かれるようなものよりも、むしろ誰かに嫌われるようなものを探していくと面白いような気がする。 大手からシェアを奪いに行くときには、どこかに「敵」を設定すると上手く…

不自由さが新機能の土台になる

iPhone やiPad みたいなものに比べると、昔ながらのノートPCはいかにも不自由なデザインだけれど、その不自由さというものは、新しい機能を盛り込んでいく上で、 リスク回避の手段として役に立つ可能性がある。 自己定義が浸食される ノートPCが、「持ち運べ…

本が出ることになりました

新刊のお知らせと、昔話を。 独りよがりな正義が敗北した話 まだまだ駆け出しだった大昔、本院から派遣された僻地の病院で、患者さんを「追い出す」役割を仰せつかったことがあります。 80歳をずいぶん過ぎた糖尿病の患者さんで、血糖管理も素行も悪くて、夜…

作った人の顔を見てみたい

ソニーが新しいAndroid 携帯を発表して、開発した中の人が、インタビューに答えていた。 「特徴を教えて下さい」という質問に対して、開発者は「デザインにあると思います」と答えていて、これは何か違うような気がした。 自慢話が聞きたい 新しい携帯電話は…

相手に刺される想像力

円滑な、最高には遠いかもしれないけれど、少なくとも無難ではある、「お互いに半歩だけ下がって、 丁寧語で当たり障りのない会話をする」関係というものは、人間関係の万能解なのだと思う。 こうした関係を作るために欠かせないのが「相手に刺されるかもし…

無難の伝えかた

「無難」というものは、「最高」の劣化コピーなんかではなく、本来は学びの目標そのものであって、「最高」というものは、 言わばくじ引きの結果として、運がよければあとから付いてくるものなのだと思う。 無難は難しい あきらめを前提とした「最高」を、目…

「ロバスト性」メモ

外乱に対して強く安定していること、「ロバストであること」は、どういう要件を満たすことで成立するのか、そんなことをこれから考えてみたい。 英国の自動車番組「TopGear」 の中で、家に激突しても、海に沈められても、ビルごと爆破されても、動き続けて、…

マスターアップしました

「レジデント初期研修用資料 医療とコミュニケーションについて」 という本を、昨年後半頃からずっと作っていたのですが、 おかげさまで無事マスターアップしました。忙しい中、原稿のレビューをお願いした方々、入稿当日まで原稿の改訂につきあって下さった…

努力には正しい方向がある

どこかに就職したり、何か会社を興してみたりといった体験を持たない、生まれついての「プロの政治家」という人たち、 学校を出て、最初から政治家として活動して、努力した人たちが、そのまま最上階まで行ってしまうのは、恐ろしいことだと思う。 努力した…

オムライスの底力

オムライスという食べ物は、ファミリーレストランが外食の代名詞だった昔、「2番手」を代表するような食べ物だった。 オムライスは、どこの洋食屋さんであっても、材料の順列組み合わせで作り出すことができたから、 どこに行っても、メニューの片隅には、た…

見解について

そこにある一連の事実をお互いに共有した上で、お互いが事実に対する妥当な見解を示すことで、状況はコントロールされる。 「見解の不一致」は、それぞれの目的が異なる以上、珍しいことではないけれど、事実が共有されている限り、 相違した見解は、妥当な…

食器洗い機とオーブンレンジを一体にしてほしい

単なる合体ではなくて、全自動洗濯機みたいに、同じ空間を違った目的に利用できるようなやりかたで。 レンジの掃除は面倒 オーブンレンジがあると、料理はたしかに便利になって、焼き物なんかはいかにもおいしそうに仕上がる。 あれはたしかに「いいな」と思…

道徳とルールの間

少し前、警察の任意取り調べにおける録音は、是か非か? という議論が話題になっていた。 法律家の卵(?)の人が、取り調べの現場に録音機を導入することの弊害を説いて、「そんなことはない」という突っ込みを受けて、 ちょっと盛り上がっていた。 道徳と…

フィクション欠乏症について

「大人になること」というのは、「何かに飽きる」ことと同義であって、ある分野に対して飽きることに失敗したまま、 資金力や実行力ばかりが身についた「大きな子供」は、しばしば暴走して、とんでもないことをしでかしてしまう。 オカルトの摂取は大切 たと…

診断学の方法論

お客さんの知らない技術を使って、「こんなことをやりませんか?」と提案しようにも、 それを知らない人には、そもそも未知技術の使いかたが分からない。 知らない人の「こんなことがしたい」という欲求は、たいていの場合漠然としすぎていて、顧客と技術者…

アンケート2つ

病院食 うちの施設に勤務する栄養士の人たちが、退院する患者さんに献立のアンケートを取っていた。 「病院の食事はどんなものがよかったですか?」みたいな、無難な文面のアンケートに記入をお願いして、年末にそれをまとめていたけれど、病院食独特の、い…

三菱電機IS の危機管理

「高木浩光@自宅の日記 - 三菱電機ISは結局会見で何を伝えたかったのか」で取りあげられていた、岡崎図書館事件に関するインタビューのログを読んで思ったこと。 リンク先はこちら 。この記事に関するブックマーク記事はこちら 。 大雑把に言ってしまえば、…

新しい技術をものにする

「Google へのハッキングが中国軍幹部の指示で行われた」というニュースが、個人的には最近けっこう驚いた。 軍隊の上層部なんて、どの国を眺めたところで、頭の固い老人ばかり、ましてや中国なんて、と高をくくっていたら、中国軍の幹部は、「ハッキング」…

HT-03A にCyanogenMod を導入する

常用している携帯電話にHyper-JというカスタムROMを導入 してから、今までにやったことのメモ。 公開されているROM をいくつか試してみて、現在はCyanogenMod というカスタムROM になっている。 ROMの増量 「Radio とhboot を書き換えることで、メモリを増や…

不運も実力のうち

それをどうやって身につければいいのかは分からないけれど、「運のよさ」というものは、 やはり上に立つ人が備えるべき能力の一つとして考慮に入れたほうが、組織がより健全になるのだと思う。 努力が成果になる どれだけ素晴らしい経歴の持ち主だろうと、判…

手の抜きかたを考える

戦争中に大量に作られた「戦時標準船」というものに関するお話。 戦争を継続するには莫大な物資が必要で、輸送に使う船は、戦争が始まるとすぐに足りなくなるから、 戦争中には「戦時標準船」という、大量生産品の船が大量に造られて、日米ではその考えかた…

電線に意識が宿る

スマートホンを持ち歩くようになってから考えたこと。自分なんかはむしろようやく追いついた側で、 携帯電話を使いこなしている人たちは、もっとずっと先を行っているのではないかと思う。 道具の境界がなくなった ちょっと前までだったら、原稿を書くときに…

握手には意味がある

握手というものは、「私はルールを守ります」と相手に宣言するときのどうにもなるし、 ルールの外側で交渉を行う際には、握手を行うことが、相手の立場を崩すきっかけになったりもする。 交渉は一つじゃない 交渉には、「ルールブックの上で行われる交渉」と…

面白いものと売れるもの

誰かに「これは面白い」という評価をいただいて、それを「売るもの」へと手直ししているときには、 誰もがたぶん、どこかで「面白さを削る」ような気分を味わうんじゃないかと思う。 「お金が取れるぐらいに面白いもの」と、実際に「売られているもの」との…

土俵をずらす戦略

たとえば大量の戦車や火砲で攻めてくる大軍相手に、物量で劣った側が、より強力な対戦車兵器で応戦を試みても、 物量に押しつぶされて、敗北を避けるのは難しい。 物量で勝てない敵を相手にして、相手の土俵で勝負してしまうと、戦況は間違いなく泥沼化する…

「ちゃんと」のコスト

何かものを作るときには、「シンプルなやりかた」と「複雑なやりかた」とが選べることがあって、 「ちゃんとやれば」同じ結果がシンプルに達成できるやりかたを選んでしまうと、「ちゃんと」のコストが、 構造の複雑さを上回ってしまうことがある。 「単純な…

HT-03A 備忘録

普段は HT-03A というAndroid 携帯電話を常用していて、機能的にはこれで十分ではあったのだけれど、動作速度に不満があった。 電話をかけようとして、ホーム画面から電話を立ち上げるのにも数秒かかるし、たとえばメールを出したりネットを見たり、 何かの…

正直の向こう側

「正直のありよう」というものは、語る側と調べる側とで、意味するところが全く異なってくる。 独りよがりな「正直」を貫くと、「相手は自分の意見を全く聞き入れてくれなかった」と絶望することになるし、 「お互い正直ベースで生きましょう」と親しげに声…