アンケート2つ

病院食

うちの施設に勤務する栄養士の人たちが、退院する患者さんに献立のアンケートを取っていた。

「病院の食事はどんなものがよかったですか?」みたいな、無難な文面のアンケートに記入をお願いして、年末にそれをまとめていたけれど、病院食独特の、いかにも病院食という味付けや献立というものは、あるいはこうしたアンケートが作り出したのかな、などと考えた。

アンケートを書くのは「退院する人」であって、入院したばかりの人は、もちろんそれどころじゃないから、方法論として、ここはしょうがない。

ところが退院する人に漠然としたアンケートをお願いすると、恐らくは「自分が食べたかったもの」よりも、むしろ「病人はどういうものを食べるべきなのか」を書いてしまいがちになる。その人はこれから退院するのだから、本当に食べたいものは、これから食べに行くのだろうし。

アンケートというやりかたは、だから「入院中の食事はどのようなものがいいと思いますか」といった効き方をしてしまうと、それは献立の改良につながる結果よりも、むしろ「病人は何を食べるべきなのか」という、病人食独特の空気を再確認する作業に陥ってしまう可能性がある。

このときに「どのような食事がいいと思いますか?」という質問でなく、たとえば「入院期間が今日から1週間延長になったとして、その日の夜に、何なら食べられそうですか?」という質問に変更すると、回答される献立は、ずいぶん変わってくるのではないかと思う。それが栄養的にどうなのか、そこはまた検討する必要があるのだろうけれど。

外来化学療法

薬局の人たちは、化学療法を外来で受けた患者さんに対して、化学療法を終えてみて、「経過中にどんなことを知りたかったですか?」といったアンケートを行っていた。回答された答えは、薬の効果や副作用だとか、案外教科書的な、たしかに薬剤師の人が答えやすいような回答が並んでいたけれど、「どんなことを知りたかったですか」という質問は、「化学療法を受けた」というその人の体験を、教科書的な重要さでソートしてしまうような気がする。

こういう質問形式だと、たとえば「点滴の最中は3時間ぐらい寝ていないといけないから、最低限携帯電話でも持っていないと時間がつぶせない」とか、「点滴大を引きずりながら入れるトイレは限られていて、待合室右奥のトイレが広くて使いやすい」とか、そういう「知りたかったこと」は、浮かんでこない。

このアンケートもたとえば、「どんなことを知りたかったですか?」の代わりに、「同じ病名を今日告げられた後輩に、あなただったら何を教えたいですか?」と訪ねると、また別の答えが聞けて、役立つのではないかと思う。