臨床研修

情報伝達の遅延と多様性

勤務先で変な風邪が流行っていて、この2日間身動きとれず。気管支からやたらと「いい痰」が出て、 培養に出したらなんか生えるんじゃないかと…。 エンダーのゲーム 寝てばっかりだったので、エンダーのゲーム というSFを読んでいた。 内容はありきたりの宇宙戦…

ピラミッドを登ると世界は狭くなる

砂漠の中のピラミッドが林立する世界。 大学を卒業して医者になり、どこかの病院に就職して、特定の分野の専門家になるということは、 このピラミッドを登っていくということだ。 卒業したばかりのとき。右も左も分からない状況で砂漠に放り出された研修医は…

知識の渋滞を抜け出すために

知識習得の高速道路化という現象 インターネットの普及や、安価に使える論文データベースの普及に伴い、他の人の知識の成果物の参照が、極めて容易になった。 他の人の技術を自分の参考にするのが容易な業界、とくにプログラマーの業界では、このインターネ…

競争の中で自分を見失わないために

「医者なんて一生勉強だよ」とよく言われるのだが、別に医業に限ったことではなく、持てる知識や技術を駆使して仕事にあたる以上、どんな職でも一生勉強に違いない。 研修制度が義務化され、すでに一年以上がたつ。制度の受け止め方やこなし方といったスタイ…

速く動くとはどういうことか

のろまな奴は嫌われる 速さは力だ。どんな状況にあっても、動きのすばやい研修医は、そのことで誰かの不興を買うことはない。 もちろん、仕事は早いだけではなく、正確な事だって大事。 それでも、研修医の仕事には、正確さなんか求められない。 たいていの…

個人の選択は社会を変える

一人の決断、あるいは少数のグループの決断は世界を動かす。 救世主ものの漫画(北斗の拳とか、風の谷のナウシカとか…)ではあるまいし、実世界でそんなことがおきることはめったに無い。社会的な地位の高い人、あるいは政治力の強い人なら社会全体に強い影響…

バトル・ロワイアル

競争に勝つのは楽しい。一方で、負けた奴を見るのは後味が悪い。 競争というのは、要は潰しあいだ。勝ちたいと思ったら、必ず誰かを負かさなければならない。どんな競争であれ、そこには勝者と敗者というものが存在する。勝者は何かの報酬を得、一方で敗者は…

頑張らない選択肢が大学を滅ぼす

議論なんて下らない。 どうせ結果は最初から決まってる。 声の大きい人たちは、議論が強い。結局はいつも彼らの言いなりにしかならないし、かといって喧嘩をするのも大人気ない。勝ち目のない議論に参加して、あとから目をつけられるぐらいなら、黙っている…

初期研修が不幸な人へ

いじめはなくならない 複数の研修医を擁する職場では、まず上級生-研修医が一つのチームにまとまらないと、話が前に進まない。チームにまとまるということは、すなわちお互いの力関係をはっきりと認識するということ。 下級生から信頼されるには、「いつかは…

自然な成長とは何か

およそ知識というのは、正しい場所、正しいタイミングで発現されないと、なんの役にももたたない。 正しいやり方をせずに詰め込んだだけの知識では、試験の役にはたっても、現実世界の問題を解決するための道具にはなりえない。正しい知識を身につけるには、…

怒りの季節のこと

去年の卒業生には、まだ少し早いかもしれない。 2年目を終わって救急外来へ。救急の業務にもなれ、忙しい外来の中で患者さんをさばいていく知恵も身についた頃。卒業したばかりの時には針一つ刺すのにもおどおどしていた研修医も、いつのまにか救急外来業務…

「患者のため」というロジックボム

市中病院で働くのにはコツがいる。市中病院は組織がしっかりしていて、チームでの作業がやりやすい。その病院のルールの中で働いているかぎりは、周りの人が自然に手伝ってくれるので、物事がスムーズに動く。ところが、長い歴史のある病院には厳格なルール…

全体を把握する

研修をさせてもらった病院では、まずは部分の専門家になることを求められた。 細い血管にも点滴が取れるようになること、必要な時にCVラインを取れること。気管内挿管、心臓マッサージといった救急手技。そして疾患ごとの治療方法や、薬剤の使い方といった知…

平等な競争の病理

一つの病棟内でも、ベッドの状況判断をする役、急変時にとりあえず突っ込んでいく役、他科との交渉役など、同じ兵隊の位の医者同士でも役割は分担される。 患者さんの急変時もそうだ。そのとき居合わせた医者が、同じ仕事に殺到したら患者は死ぬ。挿管をする…

早く心臓が止まればいいのに

この患者さん、早く心臓が止まらないかな。そうなれば、自分にも何をすればいいのか分かるのに。 ACLSコースの受講を終了した新人研修医は、しばしばこうした不埒な考えをもって救急外来に降りてくる。 苦しんでいる人を診察するのは恐ろしい。まず苦しんで…

何に使うのかわからない薬

研修医 先生、どうしてここでミラクリッドを使うのですか? ICUスタッフ ミラクルだから。 ミラクリッドの使いかたの説明としては、これ以上に適切な説明を知らない。 特にICUに入ると、ミラクリッド、フサン、FOY、FFP、ステロイド、免疫グロブリンといった…

トラッカーになろう

軍の特殊部隊などのチームは、各々が分担する役割が違う。 コマンダー:チームのリーダー。通信機器も携行する。 ブレイカー:ドアブリーチャーなどとも呼ばれる。突入の際のドアの破壊を担当。 シューター:突入要員。基本的にすべてのチーム員はシューター…

大学病院を出る人たちへ

最後はやはりこれで。 おはよう、諸君。 ……あと一時間たらずで、君たち研修医諸君は市中病院へ向かって飛びたち、 史上空前の強敵と交戦する。時を同じくして、各地の大学病院も、日本中の 市中病院に対し同様の攻撃を行う手はずだ。 諸君がまもなく赴く戦い…

ローテーション終了

最初の病院に就職したとき、全てのレジデントは1本のハサミをもらった。 これはCPR用の、患者さんの服を切り裂くためのもの。非常にごっついデザインで、実際のところ何でも切れる。見た目とは逆に値段は安価で、1本500円もしない。 レジデントというものは…

有名病院研修医の予後が不良なことについて

有名病院で研修を受けた研修医が他の病院へ移ると、あまり幸せになれないことがあるらしい。 自分が研修を受けた病院は有名でもなんでもないが、卒業後の研修医のその後が、必ずしも幸福なものではないことは伝わってきた。うちだけかと思っていたら、よその…

研修医制度見直し

ローテーション方式の研修制度がもう見直されるらしい。地方公立病院への派遣医師の減少の問題が顕在化してきたため、医師派遣システムとしての医局の力を見直し、現在のような卒業生の入局科選択の幅の広い制度を元に戻すという。 この1年間、ローテーショ…

研修医の勇気と責任感

勇気を育てる 研修医教育において、もっとも重要な要素が勇気づけである。 研修医の目には、上級生の能力は途方もなく大きく、有能に見える。そうした上級医に鍛えられながら、研修医は持ち前の勇気だけに頼って自分を支えている。 この勇気を支えてやるのが…

難民化した研修医の明日

ローテーション制度も、そろそろ施行後1年を終えようとしている。 この制度は、研修医が全ての医局を見られる。仕事のつらそうな医局、教育をあまり熱心に行ってくれなかった医局は敬遠される。研修医同士の情報交換を活発に行えば、「勝ち組み」医局と「負…

ゴールの設定

研修医を倒れるまで働かせるためのTips。 某高校のマラソン大会は、かつて(今もか?)富士スピードウェイで行われていた。 あのサーキットはバックストレートの長さで有名なのだが、サーキットを走って疲れ果てた頃、最終コーナーを回ってバックストレートに出…

経験を物語として伝える

自分の経験を下級生に教えるには、カンファレンスよりも医局でのバカ話のほうが効果があるという話。 むかし、不信の病にとりつかれた王がいました。自分の妃すら信じることができないので、次々と妃をめとっては、翌朝殺してしまうのです。 この王のもとへ…

手に職のついた医者

研修医を育てるにはお金がかかる。研修医の手技には無駄が多く、一方給料だけはきっちり持っていかれる。 自分が研修をさせてもらった当時、研修医が自分の食い扶持を自分で稼げるようになるまで最低3年、その間に病院が持ち出すお金は一人当たり2000万円程…

臨床の型の伝達

当院には昔、外来見取り稽古というものがあった。 救急外来をローテーションするレジデントは、1日のうち決まった時間は外来をやる上司の後ろに黙って立ち、ひたすら外来の様子をうかがったり、上司の処方箋書きを手伝ったりする。 下級生からの「あまりにも…

暗黙知の伝達

親切な説明や、詳細なマニュアルなどで伝えられるものだけが知識ではない。 例えばある人間の顔を表現する場合、当人の顔が目の前にあれば「この顔だ」と説明できるが、その風貌を言葉だけで他人に伝えることは困難である。例えば誰かに自転車の乗り方を説明…

ペアプログラミングの概念を用いた臨床研修

研修医の教育は面倒くさい。スタッフも、シニアレジテントも、研修医の教育に割く時間はもう1ナノ秒足りとも増やしたくない。一方、研修医の成長には誰もが期待している。早く1人前の戦力になって、病棟業務をより軽快にこなして欲しい、自分達が日々行って…

医師の独り立ち

研修医を育てるにはお金がかかる。研修医の手技には無駄が多く、一方給料だけはきっちり持っていかれる。 自分が研修をさせてもらった当時、研修医が自分の食い扶持を自分で稼げるようになるまで最低3年、その間に病院が持ち出すお金は一人当たり2000万円程…