臨床研修

エキスパートシステムのこと

エキスパートシステムのこと エキスパート自身は、自分が何でエキスパートでいられるのかを説明できない エキスパートの人が、自身の行動原理を本気で文章化しようと試みると、 その人はもはやエキスパートではいられなくなってしまう プロの選手とプロのコ…

不幸を呼びこむ人

病院ごとの実力を、何かにつけて比較する 改善策の提案よりも、欠点の指摘が好き 同業者をほめることより、けなすことが先 属人的な説明を好む こんな人が近くにいるならば、研修医の人達は、可能な限り距離をおいたほうがいい。 不幸は伝染する 不幸を呼び…

院長室の秘儀

昔研修していた400床の民間病院では、一晩に当直する医師の数が12人。 救急外来4人。内科2人、外科2人、産婦人科、小児科が各2人。 病院の隣に「夜明かし」という飲み屋さんがあって、そこの奥座敷が整形外科の第2医局。 朝の5時ぐらいまでだったら、そこに…

モデルが現実を駆動する

心不全というのは、最初は「ポンプが作動しなくなる」病気だと理解されていた。 いくつかの発見があって、「ポンプ不全モデル」で説明できない事実が出てきて、今度は 「血管抵抗モデル」という新しい概念が提出されて、心不全という病気は、 今では「内分泌…

クレーム対策試案

クレームの内容には無数のバリエーションがあるけれど、 クレームを通じて得られるものには限りがある。 クレームの内容とか、ましてや「正しさ」なんて、いくら議論したところで喧嘩にしかならない。 「とりあえず謝っとけ」というのが最近主流になりつつあ…

爺医の人達は引退前に治療教義を語り残すべき

医者ならこう考える ネット世界でのおしゃべりが盛り上がると、 いろんな業界の人たちがひとつの話題に集まってくる。 それぞれの立場や考えかたから意見を発信して、議論は延々と続く。 企業家ならこう考える。プログラマならこれが正解。経済畑ではこんな…

印象診断と臨床診断

尿路結石=「痛くて苦しんでるのに元気」 尿路結石というのは本当に痛くて、都市伝説では解離性大動脈瘤の次に痛いとか、 「痛い病気」トップ5には必ず入るとか。 強い痛みが突然来るから、救急車を呼ぶ人が多い。痛いから、みんなストレッチャーの上で苦しむ…

改革は外からやってくる

医療の自由化に欠けているもの 公平配分政策から、傾斜配分政策へ。 資本を公平に分配することを止めて、富を生み出す力が強い人達に集中して分配すると、 社会全体が活性化してみんなが豊かになる。 貧富の差は当然激しくなるけれど、社会全体が豊かになれ…

デスマーチなんだろうか?

久しぶりに喧嘩を売ってみる。 ♪デスマーチったらチッタカタァ行進だ デスマーチったらチッタカタァ行進だ 新人くん派遣くん かわりばんこ かわりばんこ 吐いて寝込んで チッタカタッタッタァ 病院へ連れて行け チッタカタッタタァ ♪デスマーチったらチッタ…

天秤の反対側に企業が乗る日

今年は皮膚科大人気。某大学の皮膚科医局には30人以上の入局希望が殺到して、 半分近くを断ったとか。景気のいい話。 内科は悲惨。外科はもっと悲惨。 大学院生とか、定期的な収入のない医師は、当直のアルバイトをして収入を得る。 割りのいいアルバイトは…

針の上には天使は何人?

グローバル化と専門化 いろんな業界のグローバル化が喧伝された今年。 電話回線は国境を軽々越える。シリコンバレーのプログラマの競争相手がインドにいるとか、もう滅茶苦茶。 自分達の業界は、幸いにしてまだ大丈夫。それでもフィリピンから看護師がやって…

ストップウォッチひとつでできる簡単! 医者潰し

病棟潰しのストップウォッチメソッド 難病の患者さんを病院で受けた。 いろいろな病院を転々としてきた人。家族の方が、病棟を評価する基準も独特。 ご家族は、ナースコールを押してから、 実際に病棟ナースが駆けつけるまでの時間をストップウォッチで記録…

自由のためのパターン化

同じ動作を繰り返して、自分がだんだんと頭を使わなく なってきているという危機感を感じたならば、たぶんその「学び」というのはうまくいっている。 パターン化した動作は、動作が意識に上ることがなくなるから、頭を使わない。 頭を使わないことは、決して悪…

道具バトン

Dan さんから受け取った道具バトンなるものを書いてみます。 医者の仕事場というのは、たぶん想像されている以上にモバイル要素が強くて、 一箇所にとどまって何かするということがほとんどありません。 そんなわけで、普段使っている道具というのも白衣に収…

現実は夢

時を越える血統の力 みんな自分自身を信じられるほど強くはない。 だから、伝統を信じ、血統を信じる。 そして、未来を信じようと試みる。 成功する人、失敗する人。 「血統書付きの一族」というのは本当にいて、一族郎党みんな大学教授の一家があったり、 …

僻地に医者を増やすには

昔から人の少ないところでしか働いたことがなかったから、 実は「人不足」というのはあんまり実感がなくて、 今も僻地の一般内科をやっているけれど、そんなに危機感はなかったりする。 悪いものでも評判は評判 最近のボクシング中継とか、映画「ゲド戦記」とか…

医師の相互評価は不可能だろうか?

医師の技量によって、診療報酬に差がつくらしい。 「医師の技量で診療報酬に差 次期改定へ提案目指す」 (毎日新聞 7/25) 厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会は今月末から、 医師の技能に応じて診療報酬にランクをつける検討を始める。 手術のうまい…

そういえば

結城さんの家に「凛(りん)」という名前の娘が生まれたら、 その子供のあだ名は絶対に「有機リン」だなあ…。 夜中に胃洗浄しながら、そんなことを考えた。 スミチオンは頭が痛くなるから嫌い。

蓄積する経験と変成する経験

経験には知識として蓄積するものと、変成してしまうものとがある 蓄積する知識は書物などから取り入れた抽象的なものが多く、 変成する知識は実世界の人間がかかわったものが多い 蓄積した経験は未知の体験に対する耐性を作り上げる一方、 変成する経験はそ…

病棟業務の回しかた

できるだけ楽をしたいので、ほとんどメモを取らずに病棟を回してる。 そんな手抜きのやりかたの一例。 病棟業務の問題点 病棟の基本的な業務の流れ 朝病院に来たらナースルームで情報収集 患者さんの回診 ナースルームに戻ってオーダー出し カルテを書きなが…

問題の大きさと未来予測の精度

入院した患者さんと話をするときには、必ずロードマップを示すようにしている。 「今の症状はあと何日したら軽減します」とか、「この症状はすぐに無くなると思いますが、 この症状を無くすにはだいたい2ヶ月前後かかります」とか。 慣れている人間の強みと…

隠す戦略と見せる戦略

大学の研究室には何台ものパソコンが並んでいて、なんだかみんな楽しそうだった。 小学生だった当時は、何をしているんだか全く理解できなかったけれど、 遊ばせてもらったゲームソフトの面白さだけは覚えてる。 ご本尊を見る不幸 昔は大学が遊び場だった。 …

絵を書いて理解する

手術の術式や画像所見の見かたを習うときには、 絵のうまい人から教わると理解が早まる。 言葉で解説してもらうだけではなくて、「どういうスケッチを書くのか」を 一緒に習ったほうがいい 「絵」は見たままをきれいに書くのではなくて、専門科ごとに伝統的な描…

症状と診断のあいだ

「人間性」とか「心」なんて、結局誰にもその正体は「わからない」のです。ガンダムに出てくるニュータイプにでもならないと、永遠にわからないよ、きっと。だから逆に僕は、そこに書いてあることから、「その人が身にまとっている鎧の一部」を読み取りたい…

一度に大量のやるべきことに直面した時の対策

どれから手を付けるかを決める際の基準にしているのは、 締め切りが迫っているか? 想定時間よりも短い時間で終わらせられそうか? 終わらないまでも、とりあえず手を付けて少しでも前に進められそうなものか? という3つの質問です。無意識にこの3つの自…

病棟で幸せなスタートを切るために

新学期。 どこに行っても、この時期の新人はいろいろだ。 やたらと元気で要領のいい奴。 おどおどして使えない奴。 地味な奴。派手な奴。やる気を見せるのが上手な奴と、自己演出の下手な奴。 上級生は忙しい。スタッフはもっと忙しい。 中身なんか見ている…

投機としての進路選択

ローテート研修終了後の進路選択について。 医者の業界には、そもそも「就職活動」などというものが存在しなかった。 ローテート研修が導入されて2年。就職する側も、あるいはそれを受け入れる側も、 まだどうすればいいのか皆目分からない状態。他の業界から…

移動生活を続けるのに必要な技術

移動の時期だ。 今いる職場でも、来年度以降の人事の話題が増えた。 来年は○○病院へ移動になった。また小児科が撤退するらしい。 来年大学に残る2年目は、○名いるらしい。などなど。 医師の未来の不確定性 雇用も流動化した。医局が強かった頃は未来が読めた…

削る研修と育てる研修

民間病院の臨床研修 1年生の頃はひどかった。 入職してから、オリエンテーションに10日間。そのあとは、右も左も全く分からない病棟でいきなり30人持ち。 できるわけが無い。患者さんの把握をしようにも、名前一つ満足に覚えられない。新患など入った日には…

初心者の手技はなぜ怖いのか

エルステ寿司 昔の外科では、どこの病院でも「エルステ(初めての)寿司」という 習慣があった。 初めての虫垂炎。初めての胆摘。若手の外科医がなにか新しい手術の執刀医となったとき、 あるいは新任の外科の先生が新しい病院での第一例の執刀医となったときに…