2005-01-01から1年間の記事一覧

頑張らない選択肢が大学を滅ぼす

議論なんて下らない。 どうせ結果は最初から決まってる。 声の大きい人たちは、議論が強い。結局はいつも彼らの言いなりにしかならないし、かといって喧嘩をするのも大人気ない。勝ち目のない議論に参加して、あとから目をつけられるぐらいなら、黙っている…

少ない予算で人を使う方法

年棒1000万円の人間10人を、7000万円で1億円分働かせる方法。以下のような規則を設ける。 年棒1000万円。ただし、内300万円については、自己の判断により返納する権利を有する。 「義務」ではなく、「権利」というのがポイント。 自分が1000万円分働いたと思…

報われない医療過誤防止の努力

人間という生き物はばらつきが大きくて、同じことをやっても、トラブル無く上手く行く人と、どんなベテランがやっても上手くいかない人とは確実に存在する。 安全を求める努力は自壊する 治療に関するトラブルというものは避けようがない。それを減らすこと…

初期研修が不幸な人へ

いじめはなくならない 複数の研修医を擁する職場では、まず上級生-研修医が一つのチームにまとまらないと、話が前に進まない。チームにまとまるということは、すなわちお互いの力関係をはっきりと認識するということ。 下級生から信頼されるには、「いつかは…

出来ることと見えること

以前研修を受けた病院では、まず見て、学んで、その後で実際にやってみて、さらに他人に教えられるようになって一人前と習った。 「それが出来る」ということと、「それを知っている」ということとは全く違う。 知識の成長過程として、以前は何の疑問もなく「知る…

自然な成長とは何か

およそ知識というのは、正しい場所、正しいタイミングで発現されないと、なんの役にももたたない。 正しいやり方をせずに詰め込んだだけの知識では、試験の役にはたっても、現実世界の問題を解決するための道具にはなりえない。正しい知識を身につけるには、…

現状を肯定するという行為

例えば岩だらけの道があったとして、その道に転がっている岩は、道行く人からは邪魔者扱いされていたという状況があって。 ある旅人がその岩を指して「休むのにちょうどいい椅子だ」と、そこに座って休んだとき。 路傍の岩も、それを「椅子」といって座って…

Expression

発表のスライドなどを直前に作るとき、結構問題になるのが、温度板や経過表といったもの。 こんなのとか こんなやつ(出典:NEJM Volume 352:2508-2514 June 16, 2005 Number 24)。 患者さんの臨床データを、まじめにエクセルなどに記録していれば、何も悩まず…

奇跡のおきる場所

肥料をやりすぎた植物は大きく育たない。 知識も同様。現場に何かのニーズが生じたとき、それを達成するのに必要な条件に制限が加わって、はじめて新しい知恵やノウハウといったものが生み出され、その現場での知識というものに新たな蓄積が加わる。 時間的…

パンダの写真

臥龍大熊猫繁殖基地より。 書くことも無いのでパンダの写真で穴埋め。

夢を見せる機械としての大学

自分という人間は、世の中でどれほどのものなのか。今までの生き方は正しいのか。これから進もうとする道というのは「いい」道なのか。 たいていの人にとって、人間の価値というものは相対的なものだ。 自分の価値というものは、他人と自分との距離感からし…

怒りの季節のこと

去年の卒業生には、まだ少し早いかもしれない。 2年目を終わって救急外来へ。救急の業務にもなれ、忙しい外来の中で患者さんをさばいていく知恵も身についた頃。卒業したばかりの時には針一つ刺すのにもおどおどしていた研修医も、いつのまにか救急外来業務…

裏切らないという宣言

病院を移るというのは、結構恐ろしい経験だ。知り合いのいないところに一人で行かなくてはならないし、そこで初対面の医師どうし。 就職早々しなくてはならないのは、自分が信用に値する人間であり、ここでいっしょに働くだけの価値のある人間であるとアピー…

知識の次に来るものは

知識の集まるところには、お金が集まる。 毛唐の人たちは100年以上前からこのことに気がついていて、学会を作り、LancetやNEJMを創刊してきた。学会費や雑誌の収入だけじゃない。知識の流れを握るということは、すなわち力の流れを握るということだ。日本が…

その勉強に意味はあるのか

若い頃はよく勉強した。 早く上から認められたい。同級生に差を見せつけたい。周囲から「すごい奴」とはやしたてられたい。 勉強は患者さんのため?正しい治療のために知識をつける?そんなことはどうだっていい。知識は力だ。力さえあれば、発言力が強くなる。…

ハトがハトでいるために

タカ派とハト派のゲーム理論。 「タカ派の戦略->どちらかが大怪我して動けなくなるまで徹底的に戦う。 「ハト派の戦略」->自分より強そうだなと思ったら、すっと引き下がる。 集団の中でタカ派とハト派が共存したらどうなるか。普通に考えると、戦わない選択…

リスクを求める人々

誰だって死にたくない。いい目を見たい。 どうやったら生き残れる可能性が高まるのか?どういう生存戦略がもっとも効果的なのか? 取りうる戦略は、問題となっている状況のリスクにより異なってくる。 生き残るための戦略は、リスク最小戦略と利益最大戦略との…

「患者のため」というロジックボム

市中病院で働くのにはコツがいる。市中病院は組織がしっかりしていて、チームでの作業がやりやすい。その病院のルールの中で働いているかぎりは、周りの人が自然に手伝ってくれるので、物事がスムーズに動く。ところが、長い歴史のある病院には厳格なルール…

全体を把握する

研修をさせてもらった病院では、まずは部分の専門家になることを求められた。 細い血管にも点滴が取れるようになること、必要な時にCVラインを取れること。気管内挿管、心臓マッサージといった救急手技。そして疾患ごとの治療方法や、薬剤の使い方といった知…

傾聴という万能薬

設計者の発言: モデリングセッションに必要な能力「共感力」を読んで考えたこと。 「初めて吉野に花見に行ったのだけれど、千本桜ってのは誇張じゃないんだね。すごいなあ、あれは。」 春の休み明けに読者の友人がそんなことを言ったとする。それを受けて、…

平等な競争の病理

一つの病棟内でも、ベッドの状況判断をする役、急変時にとりあえず突っ込んでいく役、他科との交渉役など、同じ兵隊の位の医者同士でも役割は分担される。 患者さんの急変時もそうだ。そのとき居合わせた医者が、同じ仕事に殺到したら患者は死ぬ。挿管をする…

価値観の多様性を認めるということ

多様性がマイブームだ。 ローテーション研修制度。ガイドライン中心の診療。 どちらもお上が「あるべき研修医、あるべき診療基準」を示して、「何が正しく、何が間違いか」、「どちらが優れていて、どちらが劣っているのか」を決定し、順位づけしようとして…

それは患者であって人ではない

やることは決まっている。たぶんこの病気だ。経過も理学所見も、まず間違いなくその疾患を示唆している。すでにその病気に対して正しい治療は開始され、後数時間もすれば症状は落ち着くはずだ。 それでも本当に正しいことをしたのか。自分の下した決断は合っ…

早く心臓が止まればいいのに

この患者さん、早く心臓が止まらないかな。そうなれば、自分にも何をすればいいのか分かるのに。 ACLSコースの受講を終了した新人研修医は、しばしばこうした不埒な考えをもって救急外来に降りてくる。 苦しんでいる人を診察するのは恐ろしい。まず苦しんで…

同意書を取るときの注意

セールストークの方法論から。検査同意書をすばやく取るために普段気をつけていること。 議論/論争は避ける 議論は理性の働きを活発にするので、迅速な判断を妨げる。 相手の体験に合わせて話題を選ぶ。相手の話に逆らわないようにする。 患者の正面に立たな…

外来患者の見分けかた

久しぶりに会った友人から、「お前、誰だっけ?」と言われると非常に凹む。 相手の顔を覚えるのはコミュニケーションの基本。相手に顔を覚えてもらえないのは自分が相手にとって重要でないから。 顔を覚えてもらえない外来患者さんは、主治医にとって「重要な…

遺伝子治療の未来はどっちだ

遺伝子治療が実用化するということは、近い将来先生方の仕事の大半はなくなるということです。 たとえば糖尿病や喘息の症状を訴えた人が先生方の外来に来たとする。 先生方のやることは2つ。われわれの元に電話して、必要な遺伝子を作ってもらうこと、そして…

何に使うのかわからない薬

研修医 先生、どうしてここでミラクリッドを使うのですか? ICUスタッフ ミラクルだから。 ミラクリッドの使いかたの説明としては、これ以上に適切な説明を知らない。 特にICUに入ると、ミラクリッド、フサン、FOY、FFP、ステロイド、免疫グロブリンといった…

医者が突進しなくなるとき

仕事に慣れたばかりの医者は無茶をしたがる。 医者を始めたばかりの頃、点滴一つ取れない頃は何をやってもお客さんの迷惑になる。採血をすれば相手の腕はアザだらけ。点滴を取ろうとすれば患者さんの顔が恐怖に引きつるのがすぐにわかる。 こんな状態をくぐ…

某ブランド病院の研修医のこと

1年目の研修医の頃。 何かの機会に、当院に循環器の大家の先生が講演に来て下さったときのこと。 聖○加国際病院に関係のある方だったからか、同じく1年目ぐらいの聖路加の研修医が、当院までその講演を聞きに来た。 他の病院の研修医に会うのは初めて。 こち…