メッセージの担い手としての代替医療

「生き死に」にかかわる医療はなぜだか叩かれてばっかり。 上手くいって当然。失敗したら訴訟。

高リスクの診療と、高付加価値の診療とは必ずしもイコールでなくて、 忙しい大学病院でやっていることというのは、高リスクの高度医療ではあっても、 それが必ずしも高付加価値につながらなくて。

大学では、外科系の各科が大変らしい。

忙しい科。高リスクの治療を行う科。生き死ににかかわる治療というのは、 どうしても合併症が避けられなくて、忙しくなって数が増えてくると、 どうしても不幸な転帰をたどるケースが増えてきて。

大学だって世論から自由ではいられない。 最近はリスクマネージメント委員会大活躍。

今まで1枚でよかった同意書が4枚になってみたり、 カルテに記載を求められる事項が加速度的に増えていったり。

安全対策に要求されることがどんどん増えて、委員会が行き着いた結論は、 「医師が治療行為をしなければ、合併症は減る」。

成功によって得られるものと、失敗によって失うもの。両者がだんだんと拮抗してきて、 それがある閾値を越えたとき、方針は劇的に変わる。外科治療を要する患者さんは 年々確実に増えているのに、大学では、治療件数を減らす方向に調整がなされつつある。

安全のために。

代替医療という宝の山

カテーテルを使った、癌の塞栓療法をする先生がいる。

横浜のホテルをワンフロア改造してクリニックを開いて、先生一人で朝から晩まで診療に忙しいらしい。

対象にするのは末期ガンの患者さん。どんな癌でも受け入れて、 どんな場所にもカテーテルを挿入して、塞栓物質を注入したり、化学療法を行ったり。

テレビで「癌に単身で戦いを挑む医師」として、好意的に取り上げられていた。

問題なのは、それに治療効果が期待できないこと。

塞栓療法は、肝臓なんかの特定の癌を除いて、延命効果が証明できなかったから、 もう廃れてしまった治療。保険も効かないし、やる人はほとんどいない。

番組では、誰もウソは言っていなかった。

  • その先生は「癌が小さくなる」とは言ったけれど、「直る」とは言っていなかった
  • 患者さんは「先生の治療は効果がすぐに実感できるんです」とインタビューに答えていた。 塞栓物質を注入した血管はその場で潰れるから、たしかに効果は目に見えた
  • 「治療途中で亡くなる方いらっしゃいます」。相手にするのは末期の患者さん。 5年先にどうなるのかは誰も興味が無さそうだった
  • 治療がうまくいった人は癌が小さくなって、そのときは元気になる。 「先生に救っていただきました」。インタビューではこう答えていた

延命優先の、今の西洋医学の範疇では、進行癌の患者さんにできることはほとんどない。

この先生がやっているのは、ある意味代替医療

負担の少ない方法で、患者さんに 「腫瘍が小さくなった」という満足感を販売すること。病気の治癒を目的にしているわけではなくて。

いまものすごい人気らしい。

共産主義は信じないけど共産党は信じてる

次の選挙は共産党にしようと思う。

政治はよく分からないから、昔から自民党支持。このあたり思考放棄。

  • 自民党には「もう少しまじめにやってくれ」みたいなメッセージを送りたいけれど、 民主党社会保険庁の味方。自分の振り上げた拳で誰かが笑う構図は嫌だから、民主党は無し
  • 公明党とか社民党とか、立ち位置が今一つあいまいだから、 中途半端に議席が伸びたら自民党とくっつきそうで、 それはそれで全然支持できない
  • 棄権は論外。「棄権」で送れるメッセージというのは、「与党に全面的にお任せします」という 思い。これでは意味がない

自民は支持するけれど、「怒っているぞ」というメッセージは伝えたい。 引き算で考えていくと、たぶん正しい選択は共産党

共産党大躍進の先に待っているのは、ロシアと化した日本。

家は焼かれ、畑はコルホーズ。成人男子はみんなシベリア送り。

誰だってそんな国にはしたくないから、共産党議席が伸びても、 誰もそれを「共産主義者が増えた」とは 取らなくて、「冗談を理解する自民党支持者が怒ってる」と受け取ってくれるはず。

何かの間違いで、共産党議席の49% を占めたとしても、残り51% はきっと、 何が何でも団結して、必死になっていい政府を作るだろう。だから今回は共産党

共産党は体制に「反対」を表明する人達。その立ち位置は極端で、 昔から変化を拒んで。共産主義なんて、昔からの支持者以外は、誰からの支持も受けなくて。

共産主義を信じる人達はこれ以上増えないだろうけれど、共産党の「立ち位置」を支持する人たちは、 もしかしたらこれから増える気がする。

メッセージの担い手としての代替医療

  • 主流に批判的な立場
  • 立ち位置が極端で、変化を拒む
  • 考えかたよりも、立場に対する支持者が多い

自民党時代の政府とか、あるいは西洋医学とか。 主流派が長期間変わらない世界というのは、 たぶんこんな立場の人達に広大なニッチを提供している。

自然分娩とか、あるいは整体やら漢方やら、 とにかく西洋医学の文脈に乗っからない人達は大活躍。

西洋医学に否定的であったり、あるいは西洋医学が「見捨てた」患者さんをターゲットにしたり。 伝統的な西洋医学を批判する一方で、自分達の考えかたに対する批判は絶対に受けなくて。 独自の考えかたを展開するけれど、西洋医学全体を乗っ取る野心は持っていなくて。

西洋医学をそれなりに信じる「普通の」人達も、「もっとサービスしようよ」とか、 「待ち時間をもっと短く」とか、きっと西洋医学に言いたいことは、山ほどあるはず。

カテーテルによるがん治療をするクリニックとか、あるいは代替医療とか。 今マスコミの人達が好意的に報道する医療の実践者というのは、 たぶんこんなメッセージの引き受け手として支持を集めて、繁盛している。

西洋医学は今でも主流派。それは間違いないはずで、主流である以上、 批判を受けるのもまた主流の務めなんだろうけれど、最近はずいぶん厳しい。

大きな病院が手術を減らして、漢方外来とかリラクセーション外来なんかをはじめてみたり、 あるいは高額な健康診断コースを作ってみたり。 大学にも経営が求められる時代。実際問題、こんな試みは相当上手くいっていて。

「与党」たる本道の西洋医学はますます叩かれて、 叩く「拳」のエネルギーをもらった代替医療は、 そろそろ本当に西洋医学の息の根を止めそう。

先週から1日に救急車20台とか、なんだかとんでもないことになっていて、 重症の人がたくさん来るのに、大きな病院はどこも一杯。救急取ってくれない。

動脈瘤破裂とか、くも膜下出血みたいな病気は、今はどこの病院も敬遠する。受けたら負け。 何か手を出さないと死んでしまうけれど、何か手を出したら絶対に合併症がおきて、 そもそもそれを避けることが原理的にできないから、トラブル必発。公式ルートでは絶対に 転送断られてしまうから、部活の先輩後輩とか、同門会の名簿大活躍。

大病院が「議席」を減らして、代替医療がその分伸びて。 「政府」がひっくり返ったとき、ハーブや漢方の人達、 大動脈瘤破裂の治療とかちゃんとやってくれるんだろうか…。