陰口という解毒薬

某所でのやりとりを読んで。

  • 社会は地層みたいな階層構造をとっている。上司と部下、顧客と社員みたいな
  • 地層をいくら圧縮しても、「層」という基本構造は変わらない。 層の違う人とのトラブルは、融和では解決しない
  • 嫌なお客とか、そりのあわない上司の罵倒というのは、雨のように 降ってくる天災だから、技術で避けるの無理
  • 「雨を避けるために雲を越えよう」というのは正しいけれど不可能で、 実用的には、「適切な傘」を捜すほうが正しい
  • 「傘」の役割は膜。雨の音を「内輪の影口」として傘の下に伝えながら、それと同時に 上から下を不可視化して、目線をさえぎり、保護すること
  • 「上」との融和を目指そうとする上司というのは、「傘」としては役立たずの存在。 少なくとも、今困っている人にとっては、上ではあっても傘ではない
  • コミュニケーションで疲れてしまう人というのは、きっと「技術があればみんなと分かりあえる」 なんていう「大きな社会」幻想を抱いていて、それが成し遂げられない原因を、 自分に求めてしまう
  • サッカーをはじめた子供がロナウジーニョをみて絶望するようなもので、 方向として間違いではないけれど、世界を大きく見すぎている。 最初は地元の少年リーグでスターになることからはじめるべき
  • たぶん実世界との折り合いのつけかたは、自分が安心して融和できる「内側」と、 二枚舌を使って折り合いをつけないといけない「外側」とを分けることから始まる
  • 最小の「内側」は個人。そこから適切な「傘」を捜して、雨の中を歩きまわって、 力がついたら上に上がって、今度は自分が「傘」となって保護する「内側」を拡大する。 そのくり返し
  • 「コミュニケーションが上手な」人と、そうでない人とを分けているのは、 社会を垂直に見るか、水平に見るかの違い。空気を読む感覚なんかじゃなくて、 層を感覚できるかどうか。厚さ1cmの均一にみえる層が あったとして、それが1mmの層10枚に見える人と、1cm1枚にしか見えない人とがいる
  • 水平方向に大きなコミュニティを作っている人というのは、実は水平に動いていなくて、 社会をものすごく細かい「層」の集まりとして認識している。ごくわずかずつ上昇することを 繰り返して、上に対しては笑顔、下に対しては黒笑。よくみれば層ごとに 2つを使い分けているはず
  • 個人的には「水平のつきあい」をしている人はいない。すべては上下。 間違ってるかもしれないけれど、今のところ30ウン年、実用的には困っていない

大昔。ローテートしていて、ひどく折りあいの悪い上司と働いて。 潰れかかって疲れたとき、一番「効いた」のは、別の科の上司が 「あいつ業績も腕もないんだから、口だけ達者なんだから気にしなくていいよ」 と陰口を叩いてくれたことだった。

下品だし、単なる体験だし、教科書的でも医学的でもないけれど、 陰口を介したコミュニケーションというのは、理想解ではないにしても、 手が届く範囲での最適解なんだと信じてる。