神奈川県の現状

このあいだ遊びに来た下級生の話。

  • 奈良県の産科事例、例の18病院が救急搬入を断った話は、現場では誰も驚かなかった。 神奈川では、20病院以上に声をかけても搬入先がみつからないのは日常茶飯事だから
  • 産科救急で一番不足しているのが、小児集中治療に携わる医師。30週未満の早産では、 生まれた子供は集中治療室でないと処置ができない、NICUのない病院は、 そもそも救急搬入に対応できない
  • 小児用の集中治療室が維持できなくなっている。 「早産の子供に対応してほしい」という声よりも、「風邪の子供を 24時間診てほしい」という声のほうが圧倒的に大きくて、集中治療室を放棄せざるを得ない
  • 某大学では、病院が24時間救急を受ける方針を決定した。風邪の子供を抱えたお母さんが 夜中に殺到して外来が回せなくなり、集中治療室を閉めて対応せざるを得なかった
  • 病院間のネットワークは、すでに十分に機能している。 某大学にネットワークの本部があって、電話一本で 救急対応可能な搬送先を紹介してくれる。ところが稼働している病院が減っているため、 横浜から問い合わせて搬送先小田原とか、神奈川/東京全滅で、 搬送先はヘリで千葉県とか、どんどん遠くなっている
  • 搬送中は医師が同乗する。どの施設も人数ギリギリなので、たとえば往復に3時間かかると、その間 病棟をみる人が誰もいなくなったり、外来がストップしたりで病院の機能ががた落ちしてしまう
  • 千葉県の亀田総合は「最後の砦」の一つだが、現場が疲弊して、救急対応がいつまでできるか分からない
  • 産科に進んだ同級生で、研修をまっとうできなかった人が何人かいる。 その研修医が頑張れなかったからではなくて、病院から産科がなくなってしまったから
  • 妊娠6週ぐらいに予約をしないと、もう分娩病院がみつからない。10万人クラスの市でさえ、 産科が対応できない地域が出てきている

2年のローテーション研修と、1年の専門研修。あまりにも早すぎる 「一人前」認定を受けて、4月からは産科医として責任ある立場へ。

「やれるだけやってみます」。

3年ぶり。やっと育った新人産科医。

4月の当直は月に16回だそうだ。