楽しい文章と広まる文章

「コンペに勝つ」という建築の本からの抜書き。

「予選通過」の技術

  • 審査員が誰なのかを読む :審査員との相性が厳として存在するから、その人に合わせた企画を作らないと通らない
  • 募集要綱をしっかり読み込む :自分のイメージを決めてしまって要綱をないがしろにすると、審査員は読んでくれない
  • 第一印象のインパク :コンペは何千通もの企画を10個ぐらいに絞るところから始まるから、第一印象が薄いと予選を通れない
  • テーマを絞る :一つのアイデアでなく、あれもこれもとやると印象が薄れてしまう

最終選考を勝ち抜く技術

  • 流れを読む:ライバルはどんな提案をするのか、審査員はどんな議論をするのかを予測して、最終審査に強い提案を作る
  • 社会的リアリティ:建物の実現可能性ではなく、「この提案が通ったら社会がどう変わるのか」という審査員の想像力を刺激できるかどうか
  • 一歩踏み込む:コンペでは必ず前年度入選案と似た案が出てくるが、既視感のあるコンセプトはそれだけで落とされる。 何故それが選ばれたのかを学ぶことと、それを自分の案に取り入れることとは全く別の問題
  • 共感の余地を残す:企画を最後まで完結させないで、審査員の中で発展させる余地を残す。 興味を持たれれば、書かれていないことまで深読みされて、表現されている以上に好意的に理解されることが多い。書かれ過ぎていると、「ああ、そういうことか」と底が割れてしまい、興味を持たれにくくなる
  • 思考実験:競争相手が分かっているコンペでは、自分が勝てるとしたらどんな形で、どういう筋道で勝てるかを思考実験して企画を練る。競合者の中で、自分だけができることは何かを最初に考えて、それをテーマにする
  • 世代の差を考える:先行する上の世代と同じ事をしていたのでは駄目。世代の違いを常に意識して発信する
  • 文章は短く明快に:コンセプトを明快に書けば、審査員は言外まで読んでくれる。引用は、いかにすばらしい言葉でも、審査員の目を素通りしてしまうから、自分の言葉で書く
  • モノローグは好まれない:あくまでも相手に対して何かを語りかける。一人よがりな意見は駄目
  • 強気で攻める:危険な賭けだけれど、「絶対にこれがいい」と言い張ることが大事
  • 二つの距離を使い分ける:少し離れた距離で伝えるメッセージと、至近距離でのメッセージを使い分ける

審査員は他人の目というプレッシャーの中で仕事をする

  • 審査員というのは名誉職でも何でもなくて、どちらかというと「いやいや審査する」感覚
  • 何故審査をするのか?と問われれば、「何故こんな提案を入選させたの?」と笑われないため
  • 「図書館の時代はもう古い」とか、審査員が出したテーマに対して批判的なスタンスを取った 企画は多い。提案者は、それが斬新に思えた時点で、誰もがやっていると考えるべき。 批判するなら、「その次にくるもの」を一緒に提案しないとつまらない
  • 個性とは何か。有名建築家の中でも、毎回違ったコンセプトと表現とを自分に科す建築家と、 愚直なまでに自分の個性を押し通す建築家とがいる。どちらも成功した建築家で、 どちらのスタンスが正しいのかは分からない

みんな同業者だから、ありきたりな企画を入選させてしまうと、 まわりから「馬鹿じゃない?」と言われてしまい、それがすごく怖いらしい。

「ものすごい提案を見つけたよ、すぐには分からないかもしれないけれど、すごく面白いよ」

こう胸を張れるような案を選びたいと思っているのだと。

書いて楽しい文章と、人から読まれる文章と

書いていて楽しいから発信して、時々大きな反響をもらって喜んで。

そのうち反響をもらえる頻度が増えてきて、「もらえること」のうれしさよりも、 「もらえなかったこと」のショックのほうが大きくなったら、 そろそろ書きかたを変える時期なのかもしれない。

残念ながら、書いていて楽しい文章と、反響を狙って書いた文章とは、 内容も書きかたも全然違ってくる。

「コンペに勝つにはどうすればいいのか?」というのは建築の話題だけれど、 反響をもらうための文章を書くためのヒントがあると思う。