「みんなの声」実装イメージ

概要

Weblog 時代になっても、ユーザーの多くは沈黙し、発信者は「沈黙のオーディエンス」の罠から 逃れることが難しい。

コメント欄、掲示板といった文字メディアの敷居の高さを補間する、筆者-読者間のコミュニケーション メディア、その実装方法を提案する。

はじめに

blog 時代になり、筆者-読者のコミュニケーションはより容易になったが、 Wiki をはじめとする多くのオンラインシステムでは、ユーザの90% は読むだけで行動しない。 9%は、ほんの少し書き込みをする。 目だったアクションのほとんどは、残る1%のユーザによってもたらされるという。

全読者の90%は、何か意見を持っていても、それを筆者側に発信することはない。

「ネット上の意見」というものが、読者の全ての意識の総和を反映しているものなのかどうか は誰にも分からない。掲示板やコメント欄といった、従来のテキストメディア だけでは、「サイレントマジョリティーの声」を集める手段としては不十分。

提案

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図のように、各エントリー上に3つのボタンを配置する。

それぞれのボタンをクリックすることで、blog は以下の3つのモードに変化する。

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  • 標準モード:従来どおりのエントリーの閲覧、コピー、リンクのクリックが可能なモード
  • 編集モード:マウスを左クリックしながらドラッグすることで、エントリー中に自由に線を引くことができるモード。 編集モード中は、コピーやクリックといった動作はできない
  • 集合知モード:読者は、今までに他の人が引いた「線」を全て閲覧することが可能

集合知」モードで描かれた線は、人の数に逆比例して薄くなる。読者一人当たりの「線」の濃度は、 10人描いたら1/10、100人描いたら1/100になるので、みんなが一致して線を引いた場所だけが 濃く残り、他の場所はノイズになって消えていってしまう。

  • 多様性
  • 独立性
  • 分散性
  • 集約システム

これら「集団の叡智」成立に必要な条件は、「集合知」モードには最初からそろっている。

「線」の使いかた

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  • 線を引く:重要と思った場所に下線を引く
  • 印をつける:印象深い個所、あるいは段落などに印を描く
  • 囲む:重要な個所、興味を持った場所を線で囲む
  • 落書き:悪口を書いたり、エントリー自体をグシャグシャに荒らしたりすることも可能

固定したルールは、一切提案しない。

読者は各々の「属性」や、掲示板の「空気」を意識することなく、勝手に線を引くことができる。

文字や絵を書きこむこともできるかもしれないが、マウスだけでやるのは難しいかもしれない。

利用目的

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  • アンケート:箇条書きにしたり、複数の結論や予測を書いたエントリーには、読者の興味のより強いほうに「線」が集中する。
  • 筆者-読者間のずれの可視化:筆者が興味を持った結論と、エントリー内に「線」が集中する個所が異なっていたとき、 読者が本当に興味を持った話題はなんだったのか、筆者への自然なフィードバックが可能になる
  • 「炎上」の可視化:「炎上」しているエントリーは、コメント欄の荒れ具合を読まないとその「炎上ぶり」がわからないが、 「線」の集合を見ることで、より直感的に炎上の空気を共有できる

こういった健全な(?)使いかたよりも、たぶんいろんないたずらを考える人がきっと出てくる。

  • 「大変よくできました」「がんばりましょう」みたいなハンコを作る人
  • 「お願い私を消さないで!!」みたいな吹き出しをつけた萌え絵を描く人

そういった愉快犯的なメソッドを考える余地があると、きっと盛り上がると思う。

やりたいこと

  • 不均衡の是正。本当の「みんなの意見」というものを見てみたい
  • 筆者-読者でのコミュニケーションをより緊密にはかりたい
  • 読者の意思をより効率的に吸収することで、発信するモチベーションの維持をしたい
  • テキスト以外の新しいコミュニケーションを提供することで、たとえばみんなで絵を完成させるような、 新しいWEB 文化を作ってみたい

普通の使いかた以外にもたとえばこんなことができるかも。

みんなで少しずつ「線」を描いていって、硬いページにふざけた絵を書き逃げするみたいなイメージ。

あとは、誰か嫌いな奴のblog 上で、線を使って勝手に交換日記をはじめてみるとか。

やりたくないこと

  • 線の太さや色の指定機能は実装しない。機能が増えれば増えるほど、参入する人の数は減る
  • 線の削除機能は実装しない。書きこむ人の数に応じて「線」の濃度は薄くはなるが、 筆者側から特定の線を消す機能は実装しないほうが面白い

できることなら、なるべくシンプルな実装を。問題も多いかもしれないけれど、 シンプルなほうが、きっといろいろな「使いこなし」を提案する人が出てきて面白い。

実装案

  • 現状のシステムのプラグイン、あるいは既存のサービスに競合する、新しいblog サービスとして実装
  • 読者が「編集モード」を選択した時、その線の情報がサーバー側に送られる
  • 読者が「編集モード」から離脱したとき、その情報は、他の人の「線」と加算平均されて、 「集合知モード」で閲覧可能な線の集合として保存される
  • 読者個人が引いた「線」の情報は、クッキーの形でローカル側に保存してもらう
  • たとえば10人の人が線を引いた後、11人目として線を引いた場合、その人の線は1/11の濃度で「集合知」に加わる。 残り10人の線の濃度は10/11になり、11人目の線と加算される

荒らし対策として、たとえば「線」の長さに比例して、 「集合知モード」で反映される線の濃度は薄くなるとか、 何か条件をつけたほうがいいかもしれない。

大手サイトで、一度に100人が線を引いたりしたらどうなるのか分からないけれど、 そこはプログラマの人が適当にすごい魔法を使って、何とかがんばる。

サーバーサイドに保存されるのは、各エントリーごとに1枚の画像だけだから、 情報量としては、そんなにすごいことにはならないはず。

ビジネスモデル

blog サービスがどこからお金を取っているのかはよく知らないけれど、 こうしたサービスを実装してやると、たぶん筆者側の更新意欲も多少上がり、 また「集合知」が見たくてリロードを繰り返す読者の数も増える。

結果として、そのサービスの総PV数は、既存のサービスよりも増えるはず。

「線」に参加したいならば、サービス側から何らかのプログラムをダウンロードするのが 必須になるだろうから、たとえばjword をくっつけるとか、どこかのプロバイダーの ツールバーをくっつけるとかすれば、そこからお金を取れるかもしれない。

絶対やってほしくはないけれど。

イデア料なんてもちろん請求したりしませんから、誰か作って…。。