「ゆく年くる年」その裏側
今泊まっている病院からさらに1時間ぐらい山のほうに入ると、 全国的にもそこそこ有名な神社があって、 毎年大勢の人が訪れる。
そこに行くには途中から完全な1本道になって、細い橋を3箇所渡らないといけないから、 必然的に一方通行。神社に向かう方向には行けても、そこから町には帰れない。
山の奥の小さな村。駐車場なんかないところに何百台もの車が路駐。
村は閉鎖されたような状態になって、今から朝まで、急患が出ても救急車だって入れない。
日中、そこから「脱出」してきた高齢者が入院。息子さんが「もう今から明日の朝まで、 何があっても村から出られません」と、なんだか覚悟していた。
今から朝まで、寒風吹きさらしの中で神事と初詣、振舞い酒。
「ゆく年くる年」の番組も終わる頃、やっとみんな開放されて、当直医にとって 一番おこされたくない時間になる頃、冷え切った人たちがみんなで暖まりにくるんだと。病院に。
今年は紅白だって見てないし、楽しみだった年末格闘技だって、今年は2ちゃんねるで 結果を見ただけ。まだ引越しの荷物だって解いていないし、まだもう一回、1月4日の 当直だって残ってる。
田舎のひなびた神社とかお寺とか。マスメディアが地元のふれあいを放映する影では、 きっと何人もの当直医がふるえてる。
小便はすませたか? 神様にお祈りは? 外来のスミでガタガタふるえて命ごいをする心の準備はOK?
本番はこれから。
せめて数時間の睡眠ぐらいは。
お願い神様。