攻撃的な家族との対話

み○も○たの手先なのか、「医者はこちらが監視しないとすぐにミスをする」とばかりにやたらと攻撃的な口調になる患者の家族がたまにいる。医師として普通に接していれば通常は何事もなく退院してくれるが、対処のしかたを間違えるとえらいことになる。こうした場合の対処。

攻撃の意図を探る

医師に対する攻撃は、自分たちの主義主張に注目してもらうための手段になることもある。仕事がないこと、出自や経歴に対する負い目などが医師を攻撃する本当の理由になっていることがあり、注意を要する。こうした家族に「自分たちは正しい治療をしている」といくらアピールしたところで、その攻撃性が減ることは絶対にない。

大事なの相手の動機が何であれ相手の「面子を立てる」ことで、白衣効果を信じて権威的に接したりすると火に油を注いでしまう。

攻撃に対する馴れを見せてはいけない

入院期間が長くなってくると、病棟スタッフもこうした攻撃的な家族との接し方に慣れてきてしまう。一方、攻撃的な家族は何かの意図のために注目を引く手段として医者に対して攻撃的なふるまいをする。この2つから推測できるように、家族の戦術はだんだんとエスカレートする可能性がある。

相手に攻撃されていると感じた場合、「あなた方の攻撃は効いていない」という態度に出るのはむしろ逆効果で、常にある一定のダメージをこうむっていることをアピールしたほうがよい。売り言葉に買い言葉で「訴えたければどうぞ」「そんなにいうなら紹介状書きますけど、転院します?」などと対応すると大変なことになる。病院長へのクレームの手紙程度ですむはずだったところが、ある日いきなり弁護士が病院にやってきたりするかもしれない。

集団の流れをコントロールする

多人数で面談にきた家族の扱いを誤ると、攻撃的な集団に変容する可能性がある。正面衝突を避けるには、人の流れを変えるためのいくつかの方法がある。

言葉で伝える代わりに、レントゲン写真のようなシンボルを使う。家族の注視を医者自身から外せるだけで、ずいぶんと対話がやりやすくなる。

説明する医師の立ち位置と画像を置くシャーカステンとの位置はあえて別の場所にする。攻撃的な家族の人は医師のすぐそばに座ることが多い。こうすることで「画像をお見せします」といって違和感なくその人から逃げられる可能性が出てくる。

大きな群集は細分化する。家族の集団と対面して座るのは最悪で、むしろ中央に大きな机を置いて攻撃的な人と物理的な距離をおいたほうが良い。あるいは家族には長いすに腰掛けてもらい、1列になった家族と対峙するのではなく、医師もまたその一方の端に座って話をするようにすると集中攻撃を避けられる。攻撃的な人は身を乗り出してくるが、医師が座っている限りは椅子の座面以上に身を乗り出すことは不可能になる。

もともと敵意のない群集に対しては、監視カメラがあるだけで反社会的行動を阻止できる。ムンテラをナースルームの隅のような人通りの多いところで行うだけで、ある程度は攻撃的な意思の抑止力になる。

イスラエル式テロ対処マニュアル―爆弾テロ対応の手順より。