フォネティックコード
業務にかける予算と、業務の確実性とは比例する。
現在の日本の医療行政は、これだけ少ない予算とマンパワーの割には高い信頼性を維持していると思うのだが、世間様は許してくれない。
何とかお金と人手をかけずに過誤の機会を減らす方法を、以前からあれこれ考えているのだが、そのうちの一つがこれ。口頭指示を確実に伝達する方法。
「半筒」と「3筒」を間違えた医療過誤のニュースがあったが、臨床の現場がスピード勝負である以上、口頭による指示は今後ともなくなることは無い。
複数人数による確認、オーダー用紙に文章で書かないと指示を受けないことを徹底する、バーコードリーダーを導入して患者さんの間違えをなくすようにする、といった教科書的な対策案は、潤沢な予算やマンパワーが無いと、実現するのは難しい。
無線以外に連絡のとりようが無い業界では、口頭指示があたりまえになっている。この人たちはどうしているのだろうと思い、調べていったらフォネティックコードという単語に行き着いた。
《万国共通用語》 A(アルファ)=ALFA B(ブラボー)=BRAVO C(チャーリー)=CHARLIE D(デルタ)=DELTA E(エコー)=ECHO F(フォックストロット)=FOX-TROT G(ゴルフ)=GOLF H(ホテル)=HOTEL I(インディア)=INDLA J(ジュリエット)=JULIET K(キロ)=KILO L(リマ)=LIMA M(マイク)=MIKE N(ノヴェンバー)=NOVEMBER O(オスカー)=OSCAR P(パパ)=PAPA Q(ケベック)=QUEBEC R(ロメオ)=ROMEO S(シエラ)=SIERRA T(タンゴ)=TANGO U(ユニフォーム)=UNIFORM V(ヴィクター)=VICTOR W(ウィスキー)=WHISKY X(エックスレイ)=X-RAY Y(ヤンキー)=YANKEE Z(ズールー)=ZULU軍隊やパイロットの仕事など、無線以外に連絡のとりようが無く、また確実な情報伝達が出来ないと命にかかわる仕事をしている人たちは、無線連絡のときに上記のような方法で単語を伝え合う。0/ZERO ・1/WUN ・2/TOO ・3/TREE ・4/FOWER ・5/FIFE ・6/SIX ・7/SEVEN ・8/AIT ・9/NINER ・ ./Dayseemal ・100/Hundred ・1000/Tousand
アルファベットというのは似た発音の文字が多いため、正しく伝えるのが結構大変で、周囲ノイズが多い状況などでは通常の発音では確実に伝わらない可能性がある。こんな時に有効なのがフォネティック・コードと呼ばれるもので、無線通信時のノイズの中でも相手に確実に伝えることを目的として考案されたものである。
具体的には、対象のアルファベットを頭文字に持つ単語で英文字を伝える。例えば「PROTEUS」だと「Papa Romeo Oscar Tango Echo Uniform Sierra(パパ ロメオ オスカー タンゴ エコー ユニフォーム シエラ)」になる。
フォネティックコードの歴史は古く、軍事用、電信電話会社用、航空用などいくつかの種類があるらしいが現在は統一されている。
日本では、自衛隊式の数字の呼称が有名。例えば12時30分から作戦を開始する、という連絡は「ヒトフタ、サンマル、状況開始」となる。
1 = ヒト 2 = フタ 3 = サン 4 = ヨン 5 = ゴ 6 = ロク 7 = ナナ 8 = ハチ 9 = キュウ 0 = マル
こういったものを導入すると、前記の半筒と3筒の間違えは生じにくくなる。
ただ、医療現場でこれをやると、病棟の雰囲気が「吉野家」の店内のようになってしまうのが欠点か。