Palmについて

ここ2年ほど使っているPalmについての覚え書き。

研修医の頃は、当時のチーフレジデントの先生方が出たばかりだったザウルスを使い出していた。当時のザウルスの性能で本当に便利だったのかは疑問だが、ある日「みんなにも普及させるため、これからは申し送りはザウルスでやります」との宣言が出されたことを覚えている。

申し送りが始まると、上級生の何人かは黙ってザウルスを近づけあい、赤外線通信で情報交換。ザウルスを持っていない下級生は黙ってみている。あまりにも評判が悪かったのでこの申し送りは数回で終了、元のメモを回す形に戻った。

以降、何年経っても電子手帳を使う機会もなく、またこうしたデジタルガシェットを愛用していた先生方もそのうち使わなくなってしまい、自分の周囲からは電子手帳ユーザーは消えた。一時シグマリオンを全員で買った学年がいたが、それも1年で終了。当時の病院が忙しすぎて、メモ代わりに使うには入力スピードが追いつかず、辞書代わりに使うにはソフトがあまり多くなかったのが原因だったのだろうか。

この間、自分はといえば1週間ごとに何でも書き込める紙を1枚持ち歩くのみ。用件を片端から記入していって、終わったらボールペンで横線を引いて消すだけ。長期間のスケジュールを立てる必要はほとんど無かったし、医事科がしっかりしていたので24時間患者さんのことならどんな情報でもすぐに出てきた。

病院が大きなところに代わって、状況は一変した。仕事に余裕ができた代わりに、学会だ原稿だと締め切りが決まる予定が入ってくる。患者のカルテはなくなるし、外からの問い合わせ電話は何も言わずに主治医に直接回してくる。自分で患者さんの病名と住所、ID番号、次の外来日ぐらい把握していないと何もできなくなり困惑した。

この病院の上司がザウルスを使って患者さんの情報管理をされており、非常に便利そうに見えたこと、この頃たまたま、Palmのm500が値崩れして2万円を切っていたので、いい機会なので購入してみた。最初はとにかくスケジュール管理ができて、数十人分程度の患者さんの簡単な情報を整理できれば十分と思っていたが、少ないメモリー、遅いCPUにもかかわらずさまざまなアプリが発表されており実に面白い。

最初にPOBoxというアプリの発想のすばらしさに驚いてから以後、当初の目的はどうでもよくなり、2ヶ月ぐらい色々なアプリをいれて遊びたおした。結局はKDICとpdrug、英辞朗の英和辞典、MedCalc、PalmWikiとQpocketの組み合わせに落ち着いた。

m500を購入してすぐにPalmは日本を撤退、クリエはメモリースティックを強制している時点で絶対に使いたくなかったこともあり、辞書が大きくなるほどPoBoxの動作が鈍くなるm500に限界を感じた頃にTungstenEの購入を決めた。

Tungstenを購入してから1年、画像をまったく使わないので内臓メモリーだけで特に困ることもなく、スピードが遅いと感じることもほとんどなく現在まで使っているが、慣れると手放せなくなる。画面照度をAutoDimmerなどで暗くすれば1週間ぐらい充電しなくても平気で動作するし、当初は違和感のあったGraffiti も、慣れると手書きとほとんど代わらないスピードが出る(Graffiti 1に換装しているが)。

ほとんど気にならない程度の大きさで、薬の本と辞書、ほとんど無限に近い大きさのメモ書きスペース、アドレス帳が常に手元にある便利さは、今の病院で生活していくためには欠かせない。

いまは研修医もいろいろなPDA、主にクリエを使っているので触らせてもらうが、文房具として使う分にはやはりTungstenの方が圧倒的に使いやすいように思う。

クリエのほうが機能も豊富で、作りもしっかりしているのに、スタイラスペンが使いにくかったり、Graffiti 領域がペナペナで操作感が悪かったりと肝心なところが全くだめ。

一時発売されていたキーボードつきのクリエなどはかなり欲しかったのだが、あれも打ってみるとキーがやけに硬かったり、使いもしないカメラがついていたりで結局買う気になれなかった。

Palmがもう一度日本に戻ってきてくれれば、一番いいのだけれど。