2004病棟ガイドについて

EBMばやりの昨今ですが、それに違和感を覚えることも多々あります。

自分も循環器の医者なので、ランダマイズドスタディにより検証されなかった 薬を漫然と投与したり、また過去のトライアルで効果が否定された治療をいつまでも 続けたりといったことはしないよう、研修医時代から教え込まれました。

ただ、循環器領域のように1つのトライアルで数万人の患者が集められる領域とは ちがい、他の分野で数百人規模のトライアルを読んだ程度で エビデンスがある、正しいのは自分だとその論文どおりの治療を 強制するような風潮には閉口しています。

この本は、あえてそうしたEBM的な価値観とは離れ、自分が今までやってきて、 とりあえず大きなトラブルも無く患者を帰すことができた方法をまとめてみました。

内容についてはHarrison,CMDT,Saint-Frances Guide,Mosby's Guideなどを底本にし、 それらの記載の面白そうな部分を自分の文章でつなぎ合わせたような構成をとっています。

章立てについては、Patient Presentations in General Practice という オーストラリアのGPの教科書を参考に、患者さんの症状別に記載することをこころがけ ました。各疾患の記載については簡略なものになっています。

診断のフローチャートの書き方が独特のものになっていますが、これは Nassi-Schneidermanチャートという記載法です。 もともとはコンピュータープログラムを記載するための方法ですが、限られた紙面に 診断チャートを記載するため、こうした書き方になっています。

**想定している使いかた

この本は、以下のような使いかたを想定しています。 -病棟で何か患者さんの症状で判断に困った際、鑑別診断や検査の手順を思い出す際に。 -なにか知らない病名を上司から聞かされた際、とりあえずどういった検査をオーダーすべきか調べる際に。病態は一切書いていませんが、そうした部分は極力書くようにしています。 -上司から"こんな病気、知ってる?"などと聞かれた際にこの本を見せ、とりあえず話題をつなぐために。一言「全く知りません」と答えるよりは、わずかな知識でも上級医としゃべったほうが、いろいろ有益なものを教えてもらえる確率が高くなると思います。

逆に、この本だけで病棟業務を行う(そんな人はいないでしょうが…)、信頼できる 上司のいない病院でこの本を使うといった行為は非常に危険です。 本書の内容は偏っており、また内容の正確性については全く保証できません。

今後、読んでいただけた方からの意見を参考にさせていただきつつ、内容を徐々に 正確なものに近づけていくようにしますが、現時点ではまだまだ不正確な内容も多いと 思います。訂正すべき点、ご意見など聞かせていただければ幸いです。