臨床研修制度見直し

臨床研修制度見直し 医師不足に一定の改善効果も - MSN産経ニュース

来年度から、研修制度がまた見直されて、今度こそ、各地域ごとの受け入れ可能研修医数に「上限」が 設けられるらしい。

まだこのとおりになるのかどうかは分からないけれど、実施されると、 たぶん今まで以上に「東京一極集中」が進んで、地方の医療は止めを刺されるような気がする。

序列の可視化は弊害を生む

今はまだ、研修医が働く場所は、研修医の自由選択にゆだねられていて、 みんなが東京を目指した結果として、田舎には人が残らない。

東京の病院は設備がいいし、なによりも、いい先生がたくさんいるから、教えてもらえる。

研修医は、とにかく「教えてもらえる」環境に身を置かないと、何も身につかないからこそ、東京を目指す。

「東京の研修医」に、上限が設けられると、首都圏の研修病院は、競争試験で定員を削らざるを得なくなる。

競争試験はたくさんの敗者を生んで、「負けた」人たちは、しかたがないから田舎で働く。

負けっ放しなのは嫌だから、みんなもちろん、ある程度の経験年次を積んだら、もう一度東京を目指して、 結果としてたぶん、田舎はみんなの「腰掛け」になる。

研修医の序列は、自分たち、田舎の医者にも序列意識を持ち込んでしまう。

君たち田舎医者は、せいぜい負け犬研修医諸君を温かく迎えてくれたまえ」 なんて、「見直し」を提言した東京の先生たちは、田舎で働いている中堅に、「負けた」研修医と一緒に、 こんなメッセージを届けてしまう。

自分たちだってもちろん、負け犬認定、馬鹿認定されたまま、ヘラヘラ笑って幸せに働けるほどには 人間できていないから、こういう制度はたぶん、今いる場所を捨てて、多少無理してでも東京を目指す中堅を、 むしろ増やしてしまう気がする。

まずは皆さんから田舎へどうぞ

若手の振る舞いを強制するやりかたは、恐らくは、制度全体を、下から崩壊させてしまう。

何かを変更しようと思うのならば、本来真っ先に変わるべきは、「上」の振る舞いなのだと思う。

田舎のお金は、道路と病院ぐらいにしか使い道がないものだから、幸いにして、地方の基幹病院は、 今ではけっこういい設備を誇る。足りないのはマンパワーだけ。

都会で活躍する名医の人たち、いろんな提言を行って、「阿呆な若者は地方で働け」なんて、 身も蓋もないメッセージを発信するその人たちこそが、まずは真っ先に、地方に来ればいいんだと思う。

研修医は「人」につく。

カリスマ名医の先生方が、本当に人を引っ張る力を持っているのなら、その人たちの吸引力は、 自然と地方に研修医を集める。

沖縄中部病院にしても、亀田総合病院にしても、立地で行けば、お世辞にも「都会」とは言えないような病院は、 それでも「人」に優れているから、研修医は今でも群れをなして、ああいう病院の門を叩く。

偉い人たちは田舎に来て、そのときたぶん、自らを試される。

その人めがけて、若手が群れをなすならば、そのベテランは「本物」なんだろうし、 田舎に降臨したカリスマ一人、ぽつん、とそこで働いて、若手がだれも寄りつかないのなら、 その人はそもそも、その程度の人間だったんだろう。

試みとしては、そのほうがよっぽど面白いと思うんだけれど。