土木の言葉で経済を喋る

組織や経済を土木の言葉で表現する、そんな妄想。

組織を砂山で近似する

一つの会社組織なんかで、中の人達をお給料の高い順に並べると、ちょうど砂場の山みたいな 形を作る。

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山のような形に必然性があるのだと妄想できるなら、土木をやっている人達の言葉が、 組織あるいは経済を説明する言葉として使えるようになるかもしれない。

山のパラメーター

  • 高さ:山の高さは、組織内の最高給与額。普通は会社で一番偉い人の年棒
  • 角度:山の斜面の立ち上がりかた。社内での給与分布が平等なのか、格差上等なのか
  • 底辺の大きさ:会社の中で「下層」を作る人の人数

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山の形を安定させるには、この3つのパラメーターをバランスさせるのが大切。

山の大きさ、山を作るための土や砂の性質が変わると、このパラメーターの「臨界値」 みたいなものがどんどん変わって、それを超えると山が崩れる。

山には3つの形がある

  • 普通の山:一番安定した形。最初は全てこの形から
  • ボタ山:お碗を伏せたような形。膨らむように大きくなる。役員の多い会社とか、お役所的な大企業とか
  • 剣ヶ峰:真ん中が突出した形。ベンチャー企業とか、振興著しいIT企業なんか

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最初はどの山も「普通の山」型をしているけれど、成長の早い段階で運命が分かれ、 ボタ山になるか剣ヶ峰になるか、どちらかの形をとるようになる。

山の形に応じて、成長のしかたとか崩壊のしかた、最大成長量とか、 山を維持するために必要な戦略なんかが 異なってきたりする。

ボタ山の一生

ボタ山が大きくなるときは、中心から「膨らむ」ような成長圧力が働く。

公立病院組織はボタ山の典型だけれど、 一番の高給取りである医師の給料は案外安くて、給食のおばさんとか、掃除一筋何十年 なんていう人がものすごい高給をもらっていたりして、侮れなかったりする。

ボタ山組織の特徴は、「○○さんの決済がないと何も始まらない」みたいな、 中の人同士の相互作用が非常に強いこと。

誰か功績のあった人に報いようと思っても、「その人の給料だけが上がると、 この人の顔が潰れる」みたいな同調圧力が強いから、山は風船みたいに膨らんでいく。

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がんばった人がそうでもない人を引っ張らざるを得ない組織。膨らみきったボタ山の頂点が 嫌になって抜けてしまうと、ボタ山は風船が破裂するように崩壊する。

剣ヶ峰は周囲から崩れる

個人同士のつながりが比較的弱くて、がんばった人がそのまま報われるのが、剣ヶ峰。

大きな功績を上げた人は賞与で報われる半面、そうでない人もどうしたって出てくるから、 失敗した人、結果を出せなかった人はいなくなっていく。

組織は「真ん中」が上を目指す形で大きくなる。

頂点が突出すればするほど、それ以外の人の「高さ」は減って、組織は鋭い頂点と、 広大な裾野を伴った形へと変貌していく。

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剣ヶ峰が尖れば尖るほど、山を構成する「中の人」どうしのつながりが弱くなる。

山を構成する土が乾いて、サラサラに変化してしまうと、剣ヶ峰は元の形を維持できない。 裾野が自然崩壊して、頂点がいよいよ尖った後、山は一気に崩れる。

山の将来を決めるもの

山の運命を決めているのは、たぶん中の人の「つながり」の強さと、社会正義という 環境要因。

つながりの強さというのは、誰かが何かを決断するとき、 その影響を受ける組織の「中の人」の人数。

つながりが強い組織は、たぶんボタ山型の運命を取って、 つながりが弱い組織は、剣ヶ峰の運命を取る。

流体力学レイノルズ数みたいに、同じ「つながり次数」であっても、 山が大きくなればなるほど「つながり」の相対的な力は小さくなって、 土がサラサラの砂になる方向に変化する。

会社組織が大きくなったり、小さくなったりするという変化は、 必ず内部の質的な変化を伴う。

山には常に、それを「崩そう」という力が働く。それが社会正義の力。

  • 目立ち過ぎたり、漠然とした「世論」を敵に回すようなことをした会社には、社会正義が強く働く
  • つながりが弱くなった組織には社会正義の圧力が働いて、剣ヶ峰の裾野を崩していく

ボタ山組織は崩す力に対する抵抗力が高いけれど、変化に対する対応は遅い。

剣ヶ峰にとっては、社会正義は天敵そのもの。内部告発で崩れる会社が典型。

会社への忠誠心と、「ユー、密告(コク)っちゃいなよ」みたいな社会正義に対する 同調意識とのバランスが崩れたとき、組織は根元から崩される。

機能が要請された結果、組織の形が変わるのか、それとも形は機能に影響するのか。

  • 社会正義に逆行するような会社組織とか、わずかなミスが命取りになるような仕事をする 組織は、複雑な手続きや書類の山でボタ山型に固めないと維持できない
  • 組織を大きくするときには、「つながり」を強くする手続き、意味のない役職を増やすとか、 書類に要求するハンコの数が増えるといったものは必然で、それをしないと 「剣ヶ峰の罠」にはまって崩壊する
  • 剣ヶ峰は小さくなったり、組織内同調圧力を高める戦略をとったり、 ボタ山は頂点を作る戦略を取ることで生存率を上げられるかも

答えなんかもちろん知らないけれど、 形から組織を考えたりすると、けっこう面白い読みができるかもしれない。